鮮烈な音響が炸裂〜ISCM横浜大会<オーケストラ Ⅰ >東京フィルハーモニー交響楽団 | 松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~

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<ISCM世界音楽の日々2001横浜大会
   ~日本現代音楽協会新世紀音楽祭>
公演回顧シリーズ vol.8

《オーケストラ Ⅰ 》
 東京フィルハーモニー交響楽団 “イヴニング・コンサート”
10月5日(金)19:00開演/横浜みなとみらいホール 大ホール

1) James TENNEY(USA):ディアパソン(1996/日本初演)

2) Doina ROTARU (ルーマニア):
    <影>ヴィオラ、管楽器と打楽器のための(1999)
3) 可知奈尾子(日本):
  <雲の風景>—オーケストラのための—(2000/世界初演)
4) Jukka TIENSUU(フィンランド):
      「ソーマ」~アルマ三部作より(1998/日本初演)

演奏:指揮=小松一彦 管弦楽=東京フィルハーモニー交響楽団
   2) va:長谷川弥生 perc:山口恭範 吉原すみれ

1) 2) 4) 国際審査会入選作品
3) JSCM音楽祭出品作品

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大きな経費を必要とするオーケストラ公演を、
この音楽祭にいくつ組み込むことができるかという事は、
大会日程や作品募集カテゴリー及び枠数を設定する際に、
非常に悩んだポイントでした。
できることならば、プロ・オーケストラによる演奏会を
3つくらいは実現したかったのすが、予算・財源の見通しに
照らして考えると、フル・オーケストラ公演は2つが限界
という判断に至りました。
しかも、その内の一つは、教育的コラボレーションとして、
桐朋学園オーケストラとの協力で実現することにしたので、
プロ・オーケストラによる演奏会は、当夜が唯一でした。

それでも、開催全体が小規模な印象に留まらないように、
その他のカテゴリー、室内オーケストラ、弦楽オーケストラ、
室内アンサンブルといった内容を、周到な事前準備の下に
充実させる施策を行なってきたことは、
その該当演奏会の項でまた述べていきましょう。

このような事情から、この演奏会はこの音楽祭の
謂わば“看板コンサート”の一つだった訳ですが、
その期待・思惑に違わぬ、充実した内容・演奏が実現しました。
東京フィルハーモニー交響楽団や作曲家の間を飛び回って、
この企画の準備を遂行していただいたインスペクター=
久行敏彦会員に感謝大でした。

・・・松尾&山岸の司会コンビも、初日に続いて登場・・・
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-再び司会は松尾&山岸コンビ

弦楽器セクションに精妙な調律を必要とする難曲中の難曲=
J・テニー「ディアパソン」の演奏は、
この音楽祭のハイライトの一つと記憶されるものでした。
私も気になる作品だったのでゲネプロから立ち会ったのですが、
微分音調律された弦楽器群の大胆且つ繊細な音の彩は、
客席で聴いている非常に美しいのですが、
演奏している楽団員にとっては、密集してハレーションを
起しているような音響の洪水の中にどっぷりと浸かるために、
気持ち悪くさえなるような感覚に襲われるということでした。

本番では勿論、小松一彦指揮/東京フィルハーモニー交響楽団
の献身的な演奏は、大喝采を浴びました。
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-小松一彦&東京フィル

9.11.事件の余波によるスイス航空の倒産の影響で、
来日がキャンセルになってしまった、D・ロータルー氏の作品は、
弦楽器を欠いた独特の楽器編成が新鮮でした。
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-D・ロータルー作品の特殊な編成

その他、貴重なオーケストラ演奏会ということで、
現音会員の出品枠も一つ設定(可知奈尾子作品)、
最後のJ・ティエンスー作品も北欧らしい透明感を湛えた
新鮮な音響で、全体としても極めて充実した
印象深い演奏会となりました。