1月2日の記事にも登場した私の作品集=
「現代の日本音楽第19集ー松尾祐孝」
に収録されている作品の1曲目の紹介です。

国立劇場は、東京の都心、三宅坂の坂上に佇む、
日本の伝統芸能・音楽の殿堂です。
最高裁判所の並びに位置していて、皇居のお堀に対面していて、
周囲は広々とした環境が拡がっているロケーションです。

一般的には、歌舞伎・文楽・能楽といった
総合舞台芸術系の出し物の上演を
定期的に行なっていることで知られているかもしれませんが、
長きにわたって、現代音楽界と邦楽器奏者・邦楽界の協創を
プロデュースしてきたことも、もっと広く知られて良い、
貴重且つ優れた業績だと思われます。
そのような活動の中から、数多くの現代作曲家による
邦楽器作品が誕生してきました。
ジョン・ケージのあの有名な [龍安寺] の
篳篥(ひちりき)ヴァージョンの誕生も、
この国立劇場ならではの成果でしょう。

私は、2001年に<ISCM世界音楽の日々2001横浜大会>を
実行委員長として制作総指揮した際に、
その<オープニング・コンサート>のプログラムに、
このケージの作品を盛り込みました。
そして、初演者でもある宮内庁楽部楽長=
東儀兼彦氏にご出演いただき、
世界音楽祭の日本開催の開幕に大きな花を添えていただきました。

1998年に、国立劇場の山川直治氏から
作品委嘱の打診をいただきました。
山川さんは、上述のプロジェクトの数々を制作してこられた
邦楽界に於ける現代音楽に造詣が深いキーパースンです。
まだまだ若手の私にとってこの上ない貴重な作品発表の機会
でしたから、勿論お引き受けして、作曲を始めました。

演奏会のテーマは、「打つ」で、太古の時代から現代に向けて、
「打つ」要素を主体とした楽曲を上演するという企画でした。
提示された委嘱作品への条件は、
1)16~17分程度の演奏時間が望ましい。
2)邦楽界の若手お二方(小鼓と大鼓)を起用したい。
3)そのお二方を含めて5重奏程度の楽器編成が望ましい。
というものでした。
基本的の五線譜をお読みにならない(普段は伝統芸能の世界で
ご活躍の邦楽奏者)との協演が可能な作品を
書かなくてはならないという難題を抱えた訳です。

結局、私はその小鼓と大鼓に加えて、打楽器奏者をもう一人、
そして弦楽器でありながら打つ要素を持つ楽器として、
三味線と十七絃箏を加えて、五重奏作品を構想しました。

メカニカルに絡む演奏は打楽器・三味線・十七絃箏に任せて、
小鼓と大鼓は、タイミングのみを記載した楽譜として、
委嘱の条件もクリアしながら、「打つ」という要素が、
聴覚からも視覚からも強調される音楽を実現したつもりです。

   #####<呼鼓悠遊>(ここゆうゆう)#####
     (1999年 国立劇場委嘱作品)

  演奏時間:約17分
  初演:<国立劇場4月公演「打つ」>
  1999年4月15日・16日 / 国立劇場 小劇場

   小鼓=藤舎呂英  大鼓=藤者円秀  打楽器=松倉利之 
   三味線=高田和子 十七絃=石垣清美

楽譜・CDについては、5月1日の記事をご参照ください。
春秋社から刊行されています。

今日の写真は、国立劇場の風景にしました。
伝統的な校倉造りの意匠を現代化したような風格ある建物です。

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