ブラームスの4曲の交響曲、それぞれに個性の豊かな
出来の良い4兄弟といった趣です。
4月7日の記事での4曲をまとめた音楽談義に続いて、
ポツポツと、各曲の魅力について
私なりの寸評を披露しています。

今日の記事は<交響曲第3番へ長調>です。

もっとも演奏時間が短い小振りな佇まい・・・
全部の楽章が弱奏で閉じられるという珍しい構成・・・
半音階的な和声運用を駆使した新鮮なロマン性の表出と
ブラームス独特の叙情性や憂愁の深化・・・というように、
比較的地味なイメージがあるこの<第3番>ですが、
一方では終楽章の前進的・肯定的な音楽前進もあって、
かつての名指揮者=ハンス・リヒターは、
『ブラームスの「英雄」だ!』という言葉を残しています。

この三番目の交響曲は、1883年に交響曲に温泉地として名高い
バーデン・バーデンに滞在して作曲され、
同年12月にハンス・リヒター指揮による
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団によって初演されました。
<第2番>も同じ演奏陣による初演でした。
どちらも大成功だったということです。

さて、楽章毎に音楽を追っていきましょう。

第1楽章は、ソナタ形式による冒頭楽章です。
冒頭の印象的な和音進行の中に潜む動機=
Fa-La♭-Fa という音型が、
へ長調でありながらへ短調への接近も感じさせる
響きの陰影を醸し出します。
実はこれが全曲を統一する主要動機になっていることは、
第2番冒頭のRe-Do#-Reと並んで有名な話ですね。
この響きの陰影を内包しつつも、
この冒頭楽章は基本的には力強く前進していきます。
提示部終止に反復記号は記載されています。
演奏時間が短い分、実際に反復を実施される演奏の頻度が、
高いのではないでしょうか。

第2楽章は、緩徐楽章です。
<第2番>の第2楽章に続いて、
“ソナタ形式を応用した緩徐楽章”とでもいうべきな、
発展的な昼間部を擁した充実した音楽になっています。

第3楽章は、本来ならば舞曲楽章(メヌエットやスケルツォ)
が置かれるところですが、ブラームスは交響曲の第3楽章に、
典型的なスケルツォ(或いはメヌエット)を
一環して置きませんでした。
特にこの<第3番>の第3楽章は
舞曲楽章の性格から遠いところにあるもので、
感傷的なテーマが印象的な三部形式による間奏曲となっています。
その旋律が有名で人気の高く、フランク・シナトラや
大貫妙子によって、歌詞を付されて歌唱されています。

第4楽章は、ブラームス流終楽章ソナタ形式の応用です。
<第2番>の動機を活用しているように聴こえる第1主題に始まり、
やがてこの作品の基本動機の核となる三度音程が絡みはじめ,
力強い音楽が前進していきます。
楽章の構成としては、<第1番>の終楽章で採用した
展開部と再現部を一体化した独自のソナタ形式の
序奏を無くして規模を小さくしたものと考えると
かなりすっきり理解ができます。
力強い音楽のまま押しきらずに、
最後は回想や憧れを暗示するような穏やかな結尾となります。

弱奏で全曲を閉じる交響曲は、
古典派からロマン派中期まではほとんど例を見ません。
ところが、この作品の書かれた時期、
つまり19世紀終盤から、このブラームス<交響曲第3番>や
チャイコフスキー<交響曲第6番「悲愴」>の登場から、
次第に様相が変化していきます。
マーラー<交響曲第9番>を筆頭に、二十世紀に誕生した
交響曲には、弱奏で曲を閉じるものがとても多くなります。

さて、この<第3番>、ブラームスの交響曲の中では
最も演奏頻度の低いものかもしれませんが、
独特のロマンティシズ厶を讃えた音楽性を愛好している方も、
きっと多くいらっしゃることでしょう。
フランソワーズ・サガン原作の映画「ブラームスはお好き」
にも流れてくる、女性に人気の高い交響曲と言えるでしょうか。


仕事場のライブラリーにあるCDのご紹介です。
指揮=ギュンター・ヴァント
管弦楽=北ドイツ放送交響楽団
RCA / BVCC-37252
$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-ブラームス第1・3番ヴァント盤

指揮=レナード・バーンスタイン
管弦楽=イスラエル・フィルハーモニー管弦楽団
による演奏のブラームスは珍しい組み合わせですね。
<交響曲第3番>第3楽章のYouTubeをリンクしましょう!