今夜、京都で初演される新作<フォノⅩ>の発想の核となった
私の別の打楽器独奏作品があります。<パルサー>です。

今夜の<フォノⅩ>~打楽器独奏の為の狂詩曲<π>~も、
演奏者にとって難曲中の難曲ですが、
この<パルサー>は、その上をいく超難曲です。

##### PULSER for Percussion solo #####
      パルサー~打楽器独奏の為に
           (1997)   
        上野信一委嘱作品

演奏時間:約23分

初演:1997年7月 東京・津田ホール
上野信一・打楽器展'97~PHONIX・Réflexion
     ~深新會第24回作品展~           
演奏:上野信一

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ひたすら打楽器を叩く・打つという行為に焦点を当てた作品を
目論んでいた私は、その頃に興味を抱いていた乱数の中でも、
特に一般に馴染深い円周率= π を活用することにしたのです。
円周率 π は、超絶数といって、小数点以下が無限桁続く
完璧な乱数になっている魔力的な魅力のある数字なのです。

私が毎月愛読している科学雑誌「ニュートン」の付録として
手元に在った円周率の2万桁一覧表を見ながら、
私は神の啓示にも似た偶然に狂喜乱舞したのでした。

それは、円周率の数列の出だしが3.1415~となっているので、
この作品の構造を決定する数列として
1415桁まで使用することを思いついたのですが、
その1415桁目あたりを調べてみると・・・
何と1413桁目と1414桁目と1415桁目が5/5/5と、
5が三つ並んでいたのです。
何だか縁起が良いですし、5連打を3回繰り返して
インパクト有る終止を創り出せそうで、
すっかりワクワクしてきたのでした。

結果として、3発の強打で音楽が始まり、
定常パルスが繰り返される中、1パルス毎に
1桁ずつの数字によるリズム・パッセージを挟みながら、
前後左右4組それぞれ低音打楽器と中高音5個の打楽器を
配した、つまり合計24個の任意の打楽器を
スコアの指定通りに叩き分けながら、
1000桁目まで次第にヴォルテージを上げていき、
1001桁目からは音楽の位相が全く変わって、
高速連打によって1415桁目まで一気呵成に叩き切る!
という、原始的とも言える構成・構造の曲になりました。

この曲を演奏すると、約8千発叩くことになりますから、
演奏する姿はまるでアスリートといった観になります。
委嘱者・協働制作者である上野信一氏には、
初演以来、折りに触れて内外で再演していただいています。
あまりに演奏が大変なので、定常パルスの部分を
PC音源でカヴァーする方法も試みたこともありましたが、
やはり全てを生身の人間のパフォーマンスで具現する方が、
自然な表現になるようです。

とにかくマラソンを走りきるような超難曲ですが、
若い打楽器奏者の皆さん、
どうぞこの作品に挑戦してみてください!

尚、タイトルは、パルスを放射する天体としての
天文学用語=パルサー(Pulsar)に由来していますが、
敢えてPulsを発する者という意味の造語として、
“Pulser”というスペリングを採用しました。


懐かしい初演コンサートのチラシ画像をアップしましょう。

松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-上野信一・打楽器展'97チラシ