<飛来>シリーズの紹介を続けます。

###<飛来>Ⅱ~弦楽四重奏曲第1番~###
        (1985)
<深新會第回作品展>第2夜 出品作品

演奏時間:約17分

初演:1985年6月 こまばエミナース(東京)
演奏:ニューアーツ弦楽四重奏団
   1st Vn.=小林健次 2nd. Vn.=平尾真治
   Va.=江戸純子 Vc.=苅田雅治

再演:1986年2月 abcホール(東京)
演奏:<日本の作曲家1986~JFC出版記念コンサート>
   ハレー・ストリング・カルテット
   1st Vn.=漆原啓子 2nd. Vn.=松原勝也
   Va.=豊島泰嗣 Vc.=山本祐ノ介

楽譜:日本作曲家協議会 / JFC-8512

大学院を修了して丸1年たった時期に発表したこの作品が、
<飛来>シリーズの第2弾です。
半月程前に池内友次郎先生の著作の話題を記事にしましたが、
その門下生の会として長い伝統を持つ<深新會>は、
その時期の私にとってとても重要な作品発表の場でした。
当時の會の代表=西村朗氏(藝大作曲科の数年先輩にあたります)
の計らいもあって、1985年の作品展に現代作品にも精通した大家
によるユニット=ニューアーツ弦楽四重奏団にご出演いただける
ことになり、拙作も演奏していただけることになったのでした。

それまでは、藝大学内でオーケストラ作品の演奏は別として、
近い世代の奏者によって演奏されることが殆どでしたが、
この時は日本音楽界の重鎮と言うべき奏者による四重奏団に
演奏していただける機会ということで、
緊張と期待との交錯を胸に秘めつつ、作曲を進めました。

書き始めるにあたって構想を練っていたときに、
頭に浮かんだイメージが、やはり乗鞍岳山頂付近での体験でした。
弦楽器のハーモニクス奏法の持つ響きが、
空間や宇宙の気配や風の音を象徴しつつ、曲が始ります。
弦楽四重奏という媒体を、2vn. va. vc. の4楽器(奏者)の
合奏に解体し、特に1st. vn.と vc.が独奏者の役割も折々に担いつつ、
時に独奏、時に二重奏、時に独奏対三重奏、時に四重奏、
というように変幻自在にアンサンブルを組み換えつつ、
弦楽器の響きをじっくり聴かせるように音楽は進んでいきます。
かなりロマンティックな響きのする作品です。
謂わば、私の若き日の "自然への愛の讃歌" といった趣です。

初演は実に見事な演奏でした。
自分で自分の作品に聴きほれることができた最初の瞬間でした。
そして、直後に日本作曲家協議会からの出版楽譜にも選ばれ、
<出版記念コンサート>では若手演奏家ユニットで再演され、
更にはその録音がNHK-FMで放送され、
私にとって初めてづくしの作品になったのでした。

この作品で得た楽曲構成法は、以後の私の大きな財産になり、
それを敷延・発展させながら、今日も私独自の楽曲様式を
模索し続けているのです。
若い時に必死に獲得した心の財産は、自分自身のその後を
あらゆる意味で豊かにしてくれます。

そして、このような機会を得ることができるまでに、
様々な先輩や演奏者の皆さんにお世話になったことに、
改めて感謝の意を表したいと思います。
様々な出会いが、人生を彩っていってくれるのです。

余禄:
弦楽四重奏曲というクラシック音楽の室内楽の代表格と謂うべき
楽器編成ですから、第2作・第3作と書くつもりで居た自分でしたが、
結局のところこの作品以後に弦楽四重奏曲は書かずじまいです。
我ながら・・・いったい何時になったら
「弦楽四重奏曲第2番」は誕生するのでしょうか?

今日の画像は、上記の出版楽譜の表紙のイメージ写真です。
日本作曲家協議会に問い合わせるとまだ入手できるかもしれません。

$松尾祐孝の音楽塾&作曲塾~音楽家・作曲家を夢見る貴方へ~-<飛来2>出版楽譜JFC版