抗ウイルス薬と耐性能獲得の危険性
パンデミック(H1N1)2009-briefing note その12 (原文
)
http://idsc.nih.go.jp/disease/swine_influenza/2009who/WHO_brief12.html
2009年9月25日ジュネーブ-パンデミック(H1N1)2009ウイルス感染が世界各国へ広がり、治療の経験が増えるほど、抗ウイルス薬であるオセルタミビルとザナミビルによる早期治療の重要性が強調される。早期治療は合併症発症のリスクが高い症状が重い患者や症状が急速に悪化している患者にとくに重要である。
重症患者を治療した経験をもつ医師を含めた臨床家、ならびに国家当局は、症状発症後の早急な抗ウイルス薬の投与は合併症発症のリスクを軽減し、重症患者の転帰を好転させると提唱している。この経験則は、耐性遺伝子出現とそのインパクトを最小限にとどめることにより抗ウイルス薬の効果を保持することの必要性を強調するものである。
耐性遺伝子が出現しやすい状況
WHOは臨床医に対して、オセルタミビル耐性ウイルス出現のハイリスク因子となる2つの状況を紹介し、警戒するように促している。耐性遺伝子の出現のリスクが高い状況のひとつは、重度の免疫不全、あるいは免疫抑制状態にある患者が、オセルタミビルによる治療(特に長期間)されているが、しかし引き続きウイルスが増殖している状況である場合。
耐性遺伝子の出現のリスクが高いもう一つの状況は、いわゆる「暴露後の予防投与」としてオセルタミビルを処方されている人である。これは、インフルエンザに罹患した人と接触後オセルタミビルを処方されているにもかかわらず、インフルエンザを発症した人である。
臨床現場においていずれかの状況にある人を診察した場合、医療者はかなりの確率でオセルタミビル耐性を獲得したウイルスの感染を疑わなくてはならない。このような場合には、実験室検査を行い、耐性ウイルスが本当に感染しているのか確認し、適切な感染制御法を導入、あるいは増強を行なうべきである。
もし薬剤耐性ウイルスが確認されたら、WHOは疫学調査を行ない、ウイルスの二次感染が起こっていないか調査することを推奨する。さらに、パンデミックインフルエンザ(H1N1)オセルタミビル耐性遺伝子のコミュニティーサーベイランスを展開することを推奨する。
基本的に、WHOは予防目的での抗ウイルス薬の投与を推奨しない。感染者と接触があり、重症化や合併症発症のリスクの高い人は、注意深く症状の経過を観察し、症状が発症した場合の早期の抗ウイルス薬での治療が進められる。
また、WHOは、耐性が既に知られているウイルスに感染した人に対し、その薬剤を投与することを推奨しない。従って、オセルタミビル予防投与中に症状を発症した患者は、ザナミビルによる治療を選択薬とする。
オセルタミビル耐性ウイルス
WHO協力センターやそのほかの実験室により成るGlobal Influenza Surveillance Networkが実施しているサーベイランスによると、現在も散発的にオセルタミビル耐性パンデミックインフルエンザ(H1N1)ウイルスが検出されている。今日までに、世界中で28件の耐性ウイルス検出、同定の報告が行なわれた。
すべてのウイルスはオセルタミビル耐性を示すH275Yの変異を認めていたが、ザナミビル耐性能は獲得していなかった。依然ザナミビルは、オセルタミビル耐性ウイルス感染により重症化、あるいは症状悪化を認める患者への治療選択薬である。
これらのオセルタミビル耐性ウイルスのうち、12例が暴露後のオセルタミビル予防投与と関連があり、6例が重度の免疫抑制患者への投与例、4例がオセルタミビルによる治療中の患者から検出された。
2例は治療、予防投与、共に行なわれなかった患者から検出されている。残りの症例意については現在検査中である。
現在、オセルタミビル耐性ウイルスの検出例は少ない。世界中で1万例以上のパンデミックH1N1ウイルスの臨床検体が検査され、オセルタミビルに感受性を認めている。
現状についてのまとめ
これらのデータは、いくつかの結論を示している。オセルタミビル耐性ウイルスは依然として散発的に認められており、その数は少なく、コミュニティー内、あるいは世界規模での流行している証拠は認めていない。
現在のところ、オセルタミビル耐性ウイルスのヒト-ヒト感染は認められていない。いくつかの特定の条件下では感染伝播が起こった可能性があるが、それ以上の感染拡大は起こっていない。
免疫抑制患者を除き、パンデミックH1N1オセルタミビル耐性ウイルス感染者は、インフルエンザの典型的な症状を呈している。今のところ耐性ウイルス感染により、非典型的な症状を呈したり、より重症化しやすいという事実は無い。
オセルタミビル耐性ウイルスの出現は、予想された事態であり、治験の結果と一致している。今後抗ウイルス薬の使用量が増えるにつれ、耐性ウイルスの報告が増えるであろう。WHOとその協力下にある実験室は、注意深くその推移を監視し、適宜情報と使用方法に関する助言を行なっていく。
(2009/10/15 IDSC 更新)
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