2010年10月に逝去された海外SF翻訳家の浅倉久志による、おそらくは唯一の著作。自身の訳書につけたあとがきや、折に触れてものにした文章などがまとめられている。1962年に翻訳デビューし、フィリップ・K・ディックやジェームス・ティプトリー・Jr.、R・A・ラファティ、コードウェイナー・スミス、カート・ヴォネガットなど名立たるSF作家の翻訳を多数手がけた浅倉さんは、海外SF翻訳家の“大家”と呼んで差し支えない存在。とはいえ、その文章には仰々しいところは一切なく、控えめな語り口が心地よい。当然のこと、浅倉さんに会ったことは1度もないのだが、おそらく人柄のよろしい方だったんだろうなあ……ということが想像される文章である。ぼくが海外SFに親しむようになってから一貫して浅倉久志ファンだったのも、そんなところにも大きな理由があったのだろうと思われた。
あとがきが中心ということで、体系立てて浅倉さんの考えを知る……というところまではさすがに至らずに、“読み応え”という点では残念ながら物足りないが、浅倉さんの足跡を振り返るには絶好の書物と言えるだろう。何よりも、浅倉さんがこよなく愛したSFやユーモア小説に対する思いが溢れる好著だ。(2011年4月1日)
あとがきが中心ということで、体系立てて浅倉さんの考えを知る……というところまではさすがに至らずに、“読み応え”という点では残念ながら物足りないが、浅倉さんの足跡を振り返るには絶好の書物と言えるだろう。何よりも、浅倉さんがこよなく愛したSFやユーモア小説に対する思いが溢れる好著だ。(2011年4月1日)