経済的な意味では不遇のうちに生涯を終えたSF作家、フィリップ・K・ディックは、その死後に脚光をあび、いまやハリウッドがもっとも寵愛するSF作家のひとりである。奇しくもディックが死んだ年である1982年に公開された『ブレードランナー』を筆頭に、映画化された作品は10作品近くに上る(Wikipediaによる)。おそらく、ディックが描く“ワンアイデア”が、ハリウッドの脚本家のクリエイティビティを刺激するのであろう。が、残念ながら『ブレードランナー』以外感心させられる作品はそんなに多くはない。「原作がディックだから……という理由だけで見たこの『NEXT‐ネクスト‐』も、その例外ではなく、というか、むしろ相当残念な作品だと言えるだろう。
 『NEXT‐ネクスト‐』における“ワンアイデア”は、主人公が“2分先の未来が見られる”ということ。この“2分先”という制約がミソで、おそらくディックの原作ではそこに何らかの仕掛けを施していたと思われるのだが、映画ではさほど、“2分先”というアイデアが活かされているとは思えない。それは脇においておくとしても、物語自体もかなりきつい。物語は、核テロリストの脅威に対抗するためにFBIの捜査官が、ニコラス・ケイジ演じる主人公に協力を依頼するために彼を捕まえようとする……というプロセスに大半を費やすのだが、なぜ、FBIの捜査官が、しがないマジシャンであるニコラス・ケイジにそこまで固執するのがわからないうえに、なぜニコラス・ケイジがそこまでFBIから逃げようとするのかもよくわからない。視聴者は「早く協力して、テロリストと戦えい!」とイライラすることになるわけだが、完全に力の入れどころを間違えている。で、いざ、ニコラス・ケイジがFBIに無理やり協力させられるという段になって、ニコラス・ケイジがさせられるのはテレビを見ること。未知の報道を見ろ……というわけだが、「は、はあ!?」というしかない。ある意味ありがちなエンディングにしても、脱力系である。と、ダメな作品を批判するときは、ついつい筆も必要以上に進んでしまうわけだが、まあ、どうしようもない作品である。トンデモ作品という意味では、充分楽しめると思いますけれど。

(3.0)

『ブレードランナー』(1982年)
『トータル・リコール』(1990年)
『バルジョーでいこう!』(1992年)
『スクリーマーズ』(1996年)
『クローン』(2001年)
『マイノリティ・リポート』(2002年)
『ペイチェック 消された記憶』(2003年)
『スキャナー・ダークリー』(2006年)
『NEXT‐ネクスト‐』(2007年)