●リアルに描かれる等身大の逃亡劇
ここ数年「誰かおもしろい作家いない?」と訊ねると“伊坂幸太郎”の名前を聞くことが多かった。正直気になってはいたのだが、なかなか読む機会がなかった。今回たまたま友人が貸してくれた本が『ゴールデンスランバー』で、まあ、縁とはこんなものなのであろう。
本書のあらすじを簡略に紹介すると、「首相暗殺の濡れ衣を着せられた主人公の逃亡記」ということになる。主人公はごくごくふつうの青年で、ヒロイックな展開は一切ない。極めてリアルに主人公の逃亡が描かれる。もちろん、“リアル”なだけではお話にならないので、物語を推進させるための“味付け”がある程度まぶしてあるのだが、作者はウソをつくのがうまいので、そのへんはまったく気にならない。とはいえ、本作で描かれるのは、あくまで等身大の男の逃亡劇で、誰にでも訪れうる“リアルさ”が、背筋を冷たくさせる。だからこそ際立つのが、逃亡する主人公に寄せる人々のちょっとした好意。「本当の奇跡はささやかなところにある」と作者は言いたいのかもしれない。
(おススメ度:7.5)