私の生徒に、また変わった経歴の生徒がいた。医学部を目指して三浪するも叶わず、医療系の大学に進み資格を取り、再受験を始めたのは2年前。
三浪したときの話を聞いた。
「なんとなく時間を重ねれば、成績が上がり、医学部に届いていくと考えていた」
「センターの重要さについて、全く認識できていなくて、8割にも届いたことがない」
この生徒が再受験に挑んだ。それも国公立医学部限定で。
初年度、開始当初は全く0からの出発で、本人も教える側も、苦労した。本人はとても頑張った。成績はかなり上昇した。しかし、やはり受験は甘くなかったね。センターが取れない。初年度は討死ということで終わった。
最後の挑戦と決めて臨んだ今年度、また彼は頑張った。それでもセンターは85弱だった。
出願を終えた彼が言った言葉は、
「これで駄目なら、もう無理だということだ。」
そして、合格発表、彼は敗れ去った。
今回の記事、私は淡々と書いた。感慨も何もない。これが曲げることの出来ない定命であると感じる。
彼の努力は、私も認めてあげたいところだ。しかし、彼の努力する方向は何か違和感を感じずにはいられないものなのだ。何が間違っているわけでもない。何かが違うんだよね。言葉で表すことができないもの。だからその方向の違いは、指導でなんとかするわけにもいかなかった。
国公立医学部に合格する人は、やっぱり中学受験から鍛えられている人が多い。彼はそうではなかった。中学高校の最後まで部活一色だったそうだ。
そして、再受験を始めたときに0からのスタートになっている。三浪で培ったものは何も残っていなかった。
国公立医学部に再受験する人の多くは、0からのスタートということではない。何か既に持っているものに足していくことが多い。
0からのスタートはそのスタート位置が厳しいということに加えて、数年のブランクで知識を失ってしまうような勉強の仕方をしてきてしまったということだ。それでは難しい。
この入試で分かることは、
子供の時からの積み重ねを逆転することは困難だということ
才能の壁は、厳然として高いこと。
何とも救いのない話になってしまった。
いくた
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