人前で話すことが苦手だ。
理由は足が震えるから。
止めようとしても止まらない微かな振動。
足が自分のものではないように感じる。
それでも最近、少しずつ変わってきた。
この前、20人くらいの前で、英語のスピーチをする機会があった。
Hello,everyoneから始まる一分間のスピーチ。
思ったよりも堂々と話すことができた。
その数日後、学年全体の250人の前での発表もあった。
前に喋ってからマイクを預かり、次の人に渡すまでの一分間の発表。
たったの一分間の発表で、何回心臓が鳴ったのだろうか。
それぐらいに緊張していた。
人前で話すとき、心の持ち方も変わってきた。
最初にあるのは憧れだ。
人前で堂々と発表できる人を見るたびに、こんな人になりたいと思ってきた。
その思いが、怖さよりも先に立つようになったのかもしれない。
次に、自信だ。
何度もうまくいくと自分に言い聞かせる。
聴衆全体を見渡して、なんだ、これっぽっちしかいないんだと心の中で呟く。
うまくいった自分の姿を、少しだけ客観的に思い浮かべる。
そのために、練習もたくさんしてきた。
発表はただの人生の通過点だ。
今は大きな出来事に見えても、人生という数直線の上では、たった一つの点にすぎない。
将来振り返れば、きっと笑い話になる。
振り返ると、確かにあのとき、足は震えていた。
でも不思議と、その震えを否定したいとは思わなかった。
怖さを抱えたまま、それでも前に立っていた自分が、少しだけ誇らしく思えた。
もしかしたら、ほんの少しだけ、大人になったのかもしれない。