ひとりの母の意地 | フィラデルフィア ICM 便り

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ソーシャルワーカーの見たアメリカ底辺事情

母の日のウィークエンドでいろんな方の関連記事を拝見します。

母の存在は誰にでも色んな意味やレベルで大きい。

私のクライアント達にとってもムロン、同じです。

母との軋轢や恋しさ、憎しみ。

母である側の葛藤と子への愛情。

メンタルイルネスが家族関係を様々なプレッシャーでねじりあげていると、この愛憎劇はハンパなものではありません。

色んなドラマとケースに関わって、ずっと心から離れないエピソードもあります。

私の最初のクライアント。

彼女は重度の統合失調症を患っている女性でした。

ずっと話しかけても自分の世界に浸ったままで、およそコミュニケーションにならなかった人です。

それがある日、突然に、ホントに突然に、堰を切ったように話始めたんです。

青天の霹靂の変化に、ICMを始めて間なしの私は驚いた。

思うに、半年ほど私と行動を共にして、ようやく心を開いてくれたんだと思います。

彼女は私と例えば、料理の話なんか楽しみました。

生姜を使った料理の話で盛り上がったのを今でも覚えてます。

そんな展開で、彼女に娘さん家族がいるのが分かったの。

このクライアントはよくないオトコと長い間、切れない関係が続いていて、心配した娘さんがこの暴力男が母親に近づかないよう、法定命令を取ったことがあるくらいだったんです。

でもね、彼女の方が再度、このオトコの元に戻っていくんですよ。

しばらく一緒にいて、放り出されて、後にまた戻っていくというパターン。

こいつは彼女の幾ばくも無い持ち金は取り上げるし、気に入らなければ暴力も振るう最悪オトコ。

クライアントが再度、このオトコのところに戻った時にそこまで出向いて、対立になった事があります。

こっちはクライアントの安全確認をする必要があったからね。

まー、悪魔のような形相で喚きちらして、脅されましたわ。

ざーけんじゃないよっ

大阪のオバンはひるまんよ。

でも、こっちはポリスじゃないから立ち入りも出来ないし、このクレイジーな輩をそれ以上刺激しないようにして、その場を去るしかなかった。

クライアントがドアに仁王立ちで喚いていた奴の後ろに立っていたのを確認しました。

後で、プログラムディレクターに言われましたけどねぇ。

キャット、身の安全が第一だから、えー加減にしなさい。

その時に私に同行したナースがおったまげて、心配を報告したらしい。

このクライアントは喘息持ちで足もいささか悪いので歩行はゆっくり、という人です。

クライアントはその後また、そのオトコに追い出されて、ホームレスに逆戻りになりました。

娘さんと話して、この時は、彼女が母親を一時的に自宅に住まわすことにしたんです。

ムロン、娘として母を心配してのことです。

でも、メンタルイルネスのせいで奇妙な行動を夜中でもとる母親に娘さん家族のストレスはあっと今に溜まっていきました。

何度も電話で彼女の心配と愚痴を聞きましたよ。

この家族も決して裕福ではなく、福祉のサポートで生活しています。

食いぶちが増えるのは苦しいわけです。

娘さん家族と一緒に居るのは嬉しいクライアントですが、彼女なりに娘の苦悩も分かってたんです。

ある日、私がクライアントに家計の足しにフードバンクで食料バッグを調達する案をしてみたら、彼女は二つ返事で承諾。

フードバンクで配布される食料はドライパスタや砂糖、オートミール、缶詰などの重いものばかり。

それらを一杯に詰め込んだ重量のショッピングバッグ2つです。

これはアンタが持って帰るのは無理よ。

と、言う私を聞かずに、彼女は頑として自分で持って帰るから、の一点張り。

結局、重いバッグを2つ持って、独りでバスに乗り込んで、娘さん家族が待つ家に帰って行きました。

なんとなく彼女の様子から、母として家族の役に立っているところを見せたかったようだ、と感じたのです。

この出来ごとは何故か、心に残っています。

この後、娘さん家族は母親の面倒を見切れなくなり、このクライアントは例のオトコのところに戻ってしまいました。

それからしばらくして、ある病院のERから急報が入りました。

彼女が重い心臓発作でかつぎ込まれた、との知らせでした。

彼女はERに搬送途中に息を引き取ったのです。

彼女のボーイフレンドは発作が自宅で起こったにも関わらず、彼女を独りでERに送り出して、そのまま連絡すらありませんでした。

私は悲報を知らせに娘さんに電話をして、その番号がもう繋がらないと知って、ガックリ。

引越しして、フィラから出ていくかも、とは以前に言ってたけど、これは酷い。

クライアントは独りで死んでいって、その亡骸は火葬のために、市に引き取られていったのです。

家族や長年のボーイフレンドがいるのに。

司法解剖をするメディカルエグザミナーのオフィスは、連邦や州の多くの記録にアクセス出来るので、本人の死亡後に不明の家族を捜し出すこともあります。

彼女の場合は、何故かダメだったようです。

悲しかったですね。

現在サポートしてるクライアント達も
その多くが何らかの家族ドラマを抱えています。

家族関係が少しづつ、いい方向に変わっていっている例もあります。

彼女の場合は悲劇で終わってしまい、残念です。

でも、彼女の娘さんはきっと、母の日に彼女のことを想ってくれていると思います。




ちょっと遠目で判りづらいけど、ストリートパフォーマーのオッチャンが、それは気持ちよく歌ってます。

毎日のように、この辺りに出没して、ええ調子で歌いまくってるんです。

全てコピーですけど、歌はうまい。

もー、本人はスター気分で、ステージマナーからなにから堂に入ってること!

この日の夕方は、なぜか街に人波があまりありませんでしたが、いつもはこのオヤジさんの周りに人垣が出来て、それなりに盛り上がってます。