埋もれる才能 | フィラデルフィア ICM 便り

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ソーシャルワーカーの見たアメリカ底辺事情

時々ね、クライアントの持っているセンスや能力に圧倒されることがあります。


能力って、アートであったり、文章であったり、ファッションであったり、ビジネス的なセンスの場合もあるんです。


あるクライアントはファッション命。

重い統合失調症を患っているので、古着屋やお貰い物で調達した小汚い服を自分の好みで合わせてるのはいいけど、人の度肝を抜くような格好です。でも、これがね、不思議なファッションセンスの匂いがするんです。何でもいいバラバラを着てるんではなくて、どこか雰囲気のあるコーデになってるんです。この人、メンタルイルネスがなかったら、自分のファッションセンスを表現できるプロになれる素質があったのではと思ってます。


違うクライアントは自分の心の中に起こっている・感じているものをパターンとして絵に表現できる才能があります。

この人はまだ新しいクライアントですが、最初にこの人の描いたものを見た時にピンと来てね。何とかして絵画の方面に進んでもらうことは出来ないだろうかと今でも思ってます。本人も描いている時は気分がいいし、集中できるのを知ってます。


かなり重度のメンタルイルネスの人が常に何やら紙やノートに書き込んでいるのを見て、驚いたこともあります。

書いてることは支離滅裂なんだけど、小さな文字でぎっしり、整然と書かれたその筆跡!とにかく美しくて、中世の手書きの写本を見ているよう。


統合失調症のせいで実務的なことは出来ませんが、頭のキレのよさと巧妙な人さばきを見せる人もいます。


面白いところでは、ある男性のクライアント。

ある日、この人の着ているダウンジャケットが、いつもあった中のダウンがはみ出てる大きなかぎ裂きがない、新品っぽいジャケットだったので「はてなマーク」と思い、聞いてみて、コケました。

本人いわく、「これ、同じダウンジャケットでっせ。かぎ裂きを縫って修理して、洗濯したんですわ。」


えーーーーっ!!


よく見たら、かぎ裂き部分は細かい丁寧なステッチで、見事に手縫いで閉じられてるではないですか!もう、びっくり。女子でもこんなきれいな修理縫いが出来る人は少ないやろ。この人、洗濯もきっちり。その上、洗濯後の衣類もそれは見事にきれいにたたんで、きちっとタンスの引き出しにしまう人なんです。人は見かけによらんとは、このことよ。


現在のメンタルイルネス患者のためのリハビリプログラムは病気や薬の知識習得、ソーシャライゼーションの訓練などなどがメインのメニュー、というよりはそれらだけというのがほとんど。


各個人のユニークな能力や興味を伸ばしたり、それをリカバリーに導く重要な要として取り組むシステムは実質上、存在していません。


大学や専門学校みたいに、いつかはそんな個人の才能や興味を伸ばせる選択も可能になって欲しい。そうすれば、メンタルイルネスへの偏見やリカバリー(メンタルイルネスからの)の意味というものも変わってくるのでは。

道のりは長いですね。


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ちょっと殺風景に見える空き地の光景。

ダウンタウンを離れると、こういう空き地もけっこうあったりします。