先天性か後天性か | フィラデルフィア ICM 便り

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ソーシャルワーカーの見たアメリカ底辺事情

メンタルイルネスを勉強する時に一度はディスカッションに上がるのが「Nature or Nurture」。


つまりメンタルイルネスとは「先天的なものなのか、後天的なものなのか」「遺伝的なものなのか、経験からのものなのか」という意味。


遺伝も確かにあります。母方か父方、または双方に鬱や統合失調症、依存症などの系譜がある人は多い。母や父に病はなくとも、聞くと叔父や祖母が・・・というケースもあります。また反対に言うと、クライアントが重いメンタルイルネスを患っていても、その娘や息子は何ともない場合もあるし。


幼少からの不安定な家庭環境がこれに拍車をかけるように、その人を崖っぷちに追いやって病がひどくなるケースも多々です。

親の再婚によるイジメやレイプの体験や、親が精神病院に引きずり連れて行かれるのを目撃して恐怖でトラウマになった例や、親のドラッグ中毒や投獄を見て、それが家庭というものとして育った人など。


そんな極体験の逃げ道として、または家族がすでにどっぷりと浸かっているためにティーンの頃からドラッグにはまって、メンタルイルネスの本格的な発病と共にドロ沼になって、20代ですでに手が付けられなくなった状態の人もいます。


病が先天的なものにしても、早い段階で多角的なサポートに守られると、安定できるチャンスは高くなるでしょ。やっぱり何といっても身近に家族か、家族に代わるレベルの強いサポートの存在が必要です。



私の働くプログラムのクライアントは全員、ホームレス(路上生活者だけでなく、シェルターやグループホーム在住や長期精神病棟入院者や受刑者なども)ですが、親兄弟とのコンタクトがある人もいます。が、問題なく幸せに親兄弟と連絡がある人はほとんどいません。


本人が家族との酷体験のせいで親兄弟を避けるか、家族がすでに疲労困憊で心の病を患っているクライアントからはある程度、離れていたいという状態だったり。クライアントとは会いたくないが、ICMの私には連絡してきて「うちの子、どうしてます?ちゃんとしてる?薬は飲んでるの?」と聞くのです。


クライアントが会いたがっているのを知ってる場合は、「電話でもしてやってください」と話してしてみるのですが、色んな理由や双方の感情で家族がもっとしっかりと繋がるようになるのは並大抵ではないのです。90才のお母さんが60才になる子の心配で連絡してこられるケースもあるのです。辛いですね。


メンタルイルネスでの「先天性」か「後天性」かを考えた時、先天性の要因はあるけれど、後天性の要因が病状や問題行動の悪化に大きくかかわっているのは無視できない。


家族内での経験や関係、特に子供時代の家族サポートの有無がどれだけその人の後の人生に影響するかの例をこの仕事を通じて、しみじみと見せられています。






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ダウンタウン南端の一風景。