21世紀に入り、喜寿になった吉本隆明が、ノンフィクションライターの古木杜恵と編集担当と数回にわたってに対談した結果を再現筆録したものに、吉本が推敲してできた本。

東京工業大学理学部化学科卒で、詩人として出発したが、その後文学・社会・宗教など広範囲な批評活動を続けた評論家といてのイメージの方が強い。

本書は、吉本が西伊豆の海で遊泳中に溺れた事故の後遺症で足腰が弱り、「自我流のリハビリ」に取り組んでいた吉本が唱えていた「老体論」をヒントに「老い」をテーマにしたインタビューをまとめたもの。

吉本が影響を受けてきたマルクスや親鸞の思想を通してみた「死」との向き合い方、室生犀星・川端康成・谷崎潤一郎らが老いてから著した文学作品に見る「老いの流儀』が興味を引いた。

若い頃には読む気にもならなかったが、私も老境に入ったので、ここで紹介された本もいずれ読んでみよう。