2009年12月発行の『不幸な国の幸福論』に続いて読んだのが、2012年1月発行のこの本。
当時82歳の著者が、「死」がだんだん影が薄くなっていた世の中に、突如やってきた東日本大震災を機に、とくに東北の被災者の方々に襲いかかった不幸から、希望のある未来を望み見るにはどうしたらいいかを、精神科医、小説家の体験から書いてみたもの。
第一章 少年の心に植えこまれた死
幼年学校時代の著者が、戦争で体験した身近な死
第二章 死へのアプローチ
死刑囚の心理研究で得た人の心の深さ。「心理」だけでは言いあらわせない「魂」の存在。そしてキリスト教の信仰へ。
第三章 迫りくる老いと死
突如の妻の死。キリスト教の天国、煉獄の思想。二度死にそうになったが、生きながらえた体験。東日本大震災による福島原発事故の報道と行政の問題点。
「人を救うために自分の命を捨てよ」という思想。献身的に救助活動に励み人々やボランティアの姿。
第四章 生を支える死と宗教
人間の力だけで頑張るんだということでは、今回の震災の復興はおぼつかない気がする。無力を自覚することが必要。
「頑張る力」より祈る力。科学を追究するほど謙虚な気持ちが生まれる。言葉の響きが持つ力。
科学が発達すれば「わかった」ことが増え、有限の範囲が広がっていく。けれども同時に「わからない」こと、はかり知れないこと、無限の暗闇にも触れざるをえない。そこに祈りが生まれてきます。