散歩の途中で、図書館に立ち寄って手にとった本。

60歳で定年退職した後も、65歳で再雇用契約が切れた後も、第一線の仕事を任されてきたが、今年3月末で長年働いてきた会社を離れた私にとって、歴史に名を残した先人達の隠居生活を学ぶことで、今の私の生き方でいいのか再確認したい気持ちが湧いたのだろう。読みかけの本が数冊あるが、それらを差し置いて、一気に読んだ。

作者の童門冬二は、自らの生涯の過程を「起承転々」と定め、隠居を「今まで本当にやりたいこと、やらなければならなかったことと真剣に取り組む出発点だ」と定義づける。

新井白石、黒田如水、徳川斉昭、古田織部、松平宗衍、松井遊見、伊能忠敬、鴨長明と8人の先人の「隠居力」が語られるが、やはり50歳になってから、20歳ほど歳下の高橋至時を師と仰いで、若いときからやりたかった天文学を学び、17年間日本を実測のため歩いて、精巧な日本地図を作り上げた伊能忠敬を敬服する。

今、尊敬する人は、と問われれば、迷いなく伊能忠敬をあげる。