主人公・久我清義と、幼馴染・織本美鈴の通うロースクールの学生の間では
「無辜ゲーム」と呼ばれる裁判のゲームが行われていた。
ゲームを仕掛ける者、それを受ける告訴者、証人、傍聴席に座る傍観者、
と役割分担され、模擬法廷で争う。
審判者は、結城馨。すでに司法試験に合格している秀才だ。
その判決によって勝者と敗者が決められ、無罪の者を告訴した場合、告訴者にも罰が与えられる・・・
卒業後、司法試験に合格した清義と美鈴は、司法修習に進んだ。
その修了試験を終えた頃、事件は起きた。
被害者は馨。加害者は美鈴。
ゲームではない、本物の法廷に弁護士として立った清義は、どのように裁判を進めていくのか。
人間が人間を裁くには、確信に近い心証を形成しなければならない。
有罪か無罪かは裁判官が決める。でも冤罪かどうかはおそらく神のみぞ知る・・・
無辜ゲームで、馨はいつも同害報復の罰にこだわり、正しい罪の認定と罰の決定を追究してきた。
その理由が、裁判を進めて行く中で次第に明らかになっていく・・・
そんなに期待せずに読み始めたが、おもしろかった。
専門用語がかなり出てくるので、私にはちょっと難しい部分もあり
読み直したりもしたけど、法律の専門家たちが繰り広げる頭脳戦は読み応えがあった。
幾重にも仕掛けられた緻密な構成だった。
清義が過去に犯した罪はこのままスルーされるのか?と気になっていたので、最終的には馨の想いが汲み取られる形になったのはよかったかなと思う。もちろん馨の真の意図なんて誰にも分からないけれど。