先代(祖母)が亡くなり文具店と代書屋を引き継いだ鳩子、通称ポッポちゃん。
代書仕事というのは、依頼された内容を美しい字で代筆するだけではなく、
依頼者の雰囲気や依頼の内容に合わせて
書く道具や紙、封をする糊や封筒に貼る切手に至るまでこだわって選び
さらに、依頼者が憑依したような状態にまで自分を追い込み、筆跡までも変えるという
かなり過酷な仕事だ。
先代が生きていた時は、その厳しさに反発して家を飛び出し、その死に目にすら会わなかった鳩子。
しかし今、先代の教えを思い起こしながら、真摯に自分の仕事と向き合っている。
代書屋という職業に誇りを持ちながら。
鎌倉を舞台に、夏から始まり春までの一年間が描かれている。
巻頭に鎌倉案内図のイラストがあるので、
その地図で位置関係を確認しながら読んでいった。
数々の神社やお寺、界隈のおいしい食事処、そして魅力的な人々との交流。
なんだか女性の大好物が詰まったような物語なんだけれど、
そんなほんわかした空気感の中に、時折ヒヤッと冷たい現実の残酷さが混じる。
久々に読んだけれど、小川糸さんの小説は確かにこんな感じだったなーと思い出した。