死を目前にした患者の願いをひとつだけ叶えてくれる必殺仕事人が存在する・・・
そんな噂がまことしやかにささやかれる病院で清掃のアルバイトをしている神田は、
ふとしたことから死期のせまった患者の頼み事を請け負うようになった。
そのせいで、「必殺仕事人は掃除夫の姿に身をやつしている」という噂も広まってしまったのだが
本物の仕事人は深夜に黒衣姿で病室に現れるのだという。
一体何者なのか、そしてその意味するところは・・・
前に読んだ『dele』もそうだったけれど、本多孝好さんの作品の登場人物はとても魅力的だ。
頑固でお人好しで、ちょっと斜に構えているように見えて実はまっすぐな主人公・神田。
ぶっきら棒で口が悪いが、極稀に乙女なところを見せる葬儀屋社長・森野。
幼馴染のふたりの、言葉を超えて通じ合っているような関係性がとてもいい。
神田が受けた依頼がすべて美しいエピソードというわけではなく、
死に直面してなお人間臭さを放っているのが悲しい。
いや死に直面しているからこそ、なのか。
死の恐怖や辛さに耐えられなくて、早く死んで楽になりたいと望むことも
そんな患者を前に、それでも生ある限りそれを全うしてほしいと願うことも
自己満足でしかないかもしれない。
何が正しいかなんて誰にも分からない。
ただひとつ確かなことは、
今、この瞬間、生きている。
それだけだ。