ガタン
硬質な音に意識を引き戻された。
神綺は見慣れない部屋の中にいた。洋風な、どこかの家の寝室のようだ。
「・・・・・・え~~と?」
神綺は突然の事態に途方に暮れていた。先ほどまでは自身の玉座にいたはずなのだ。
そうこうしているうちに、ばたばたと足音を立てながら、この家の家主であろう人物が部屋に飛び込んできた。
「や、やぁ。こんばんは。」
やってきた人物にできるだけ愛想よく挨拶した。かなり苦しいが。
「神綺!!」
呼び捨てである。
「何の用!?」
非難めいた口調なのは仕方ないだろう。多分一方的にこちらに非があるのだろうから。多分。
「あぁいや、ちょっと貴女が気になっちゃってね。どう?元気にしてる?」
我ながらこれほど無理があるでっちあげはないだろうと思う。
「まぁ、まぁってところかしらね。お茶淹れてきましょうか?」
まずい、真に受けられてしまったようだ。
「あぁ、すまないね。」
やがて少女は部屋を出て行き、一人神綺は寝室に取り残された。
――――懐かしい。大きくなったな。
あるとき突然やって来て、そしてまたどこかへ行ってしまった。少女―――アリスとは会って話すことも久しぶりなことだ。
以前会った時はほんの小さな子供の姿だったが、背も伸び、大人びた顔つきになっていた。
「おまたせ。」
アリスが紅茶を淹れて持ってきてくれたようだ。神綺はそれを受け取り、口をつけた。
豊かな香りが口内を満たした。
それから少し話をした。アリスは今、かつて魔界を蹂躙した巫女等の住む幻想郷というところに居を構えているそうだ。当時はアリスも彼女らの対応に走っていた。
「ちょっと大変だけど、こっちの暮らしは飽きることはないわね。」
「そう、それはよかった‥‥‥のかな?」
例の事件から少し経ったのち、アリスは突然姿を消したのだ。それ以来連絡をつける方法すらなかったため、彼女の無事は素直にうれしかった。
「――――ええ、だからいまさら私の前に姿を現さないでくれない?」
「・・・・・・え?」
ティーカップが床に落ち、盛大に砕け散った。
「――――!!」
ぐら、と神綺の視界は斜めに傾いでいった。