アリスは次第に年相応の明るさを取り戻していった。
色々なものに興味を持ち、あるいは嫌悪し、数年の空白はあろうともどこから見ても普通の女の子だ。
そのアリスが一番に興味を持ったのが魔法だった。
神綺や一般人すら当たり前のように使う魔法が彼女にとって最もそそられるものだったらしい。
試しに初歩的な魔道書のいくつかを与えてみたところ、アリスは驚異的な早さで呪文を習得していった。
神綺ですら返しに戸惑うような専門的、哲学的なことまで質問してくるようになるまでそう時間はかからなかった。
それからしばらく経った時のこと。
「侵入者・・・・・・ねぇ。」
外界から妙な人間が入り込み、好き勝手に暴れまわっているそうだ。
おそらく民間会社の外界旅行ツアー(勝手に組まれた)の影響なのだろうが、その対処に公務員があたっている。あぁ、あの生真面目君が可哀そうだ。
「さて、どうしたものか。」
「私、やっつけてくる!」
「え、アリス?ってまちなさ~い!」
制止も聞かず、アリスは数体の使い魔を連れて飛んで行ってしまった。
門番も軽くあしらわれた相手だが、果たして大丈夫だろうか。
「ま、信じて待つのも親の務め、か。」
あくまで代わりだけどね、と神綺は踵を返し、この場に背を向けた。
「神綺さま。どちらへ行かれるのですか?」
メイドの格好をした少女が訪ねてきた。
「ちょっと、ね。お出迎えの準備さ。」
神綺は歩き出していった。
その後、神綺は最深部へと侵入してきた巫女と対峙した。先程の言動から神綺は事態を軽く見ていると思われそうだが、自身の創作物を荒らした当人を許すつもりは全くなかった。しかし、侵犯者の能力は想定していたものよりも遥かに高かった。
「何なのよ、全く。」
火の海になっている市街を見つめ、神綺は途方に暮れた。
「神綺!」
アリスが声を荒げながら飛んできた。
神綺はただ視線を逸らして黙っていた。
するとアリスは黙って腰にしがみつき、力なく神綺の背中あたりをたたき続けた。
きっと、失望させてしまったのだろう。
アリスは神綺を慕ってくれていた。
神であることに違いはないが、ある種の信仰に似たものの対象があっさりと負けてしまったのだ。きっと自身の敗北よりも許せなかったに違いない。
「ごめんよ。」
それ以来、アリスは一切姿を見せなくなってしまった。