(1234)病院たより「ヒトラーと精神分析学」(1)
知の巨人フロイトは唯一の体系的医学的深層心理学である精神分析学を創設しました。彼の生み出した「無意識」とい う概念は既に日常語になっています。ネオクレペリン派のスピッツァーが改訂したDSM(アメリカ合衆国の精神障害の分類基準第3版:1980年)は1970年代まで北米精神医学の主流だった精神分析学の否定を目的としていました。DSMがグローバルスタンダードになった現在、フロイトが生み出した神経症(ノイローゼ)という病名も公式には消滅しました。神経症と同様に精神障害の心理的病因を重視したPTSDは、広島被爆者・ベトナム帰還兵の調査・研究を行ったユダヤ系米国人医師リフトンが奮闘し、DSMに強引にねじ込むことに成功しました。DSMに対立する概念であるPTSDは、常にDSMの「終わりの始まり」を夢みています。