(744)「児童期虐待の被害経験者が複雑性PTSDを呈した一例」(広島医学2004) | データベース制圧の精神科医ブログ、長崎広島原爆・福島原発・第二次大戦・児童虐待・DV・レイプ複雑性PTSDの薬物療法

(744)「児童期虐待の被害経験者が複雑性PTSDを呈した一例」(広島医学2004)

複雑性PTSD論文群の記念すべき第一弾。 若い既婚女性がリストカットを主訴に受診した。不思議な愛嬌がある女性で、子供の頃に母親から虐待を受けたこと、今でも無理難題をふっかけられること、切ると楽になるから自分は気にしてないが夫がびっくりして受診を勧めたことを深刻味なく話した。SSRIのパキシルを1錠だけ処方すると、ぼーっとして気持ちが良いと言った。それから自傷範囲が拡大し両腕を寸刻みでカットし、家出を繰り返した。SSRIによる攻撃性の悪化であるアクチベーション・シンドロームが公認される前のことでパキシルは処方され続けた。入院を拒む患者に夫が離婚まで考え始めたところで、規則的に通院さえすれば、味方になり夫にも離婚しないよう弁護してあげると「約束」した。途端に自傷行為が中断し、今まで話さなかった母親からの致死的な虐待行為を思いだし語った。それまで、虐待行為を語っては虐待者を弁護する「二重思考」が顕著だったが「母親のくそったれ」と言えるようになり、夫の仕事の都合で転居し治療終了した。治療終盤で妊娠の事実がわかるまでパキシルは処方されていた。一年後に子供が生まれましたとハガキが届いた。