山古志・川口・小千谷
「くらしの中の地域と歴史」
村落空間の復元的研究
〈研究ノート〉
――表紙写真とその周辺――
『令和版 小千谷市史』の提唱
その18 新しい視点
(令和六年十二月二十五日発行)
『小千谷文化』第250号
一、伝説の経済学者、小千谷に立つ
―没後十年、ノーベル経済学賞に最も近い日本人と称された巨人―
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郷土の豊かな個性を残すなら、逆に目立った事象ばかりを捉えることは有意義ではない。「小千谷地域はこうです」と強く主張するほど外発的な価値観が優先され地域の個性は失われていく背景がある。宇沢理論の原点にある「豊かな農村」の心には、武士の誉れや観光資源、産業資源よりも大切な前提がある。
「資本主義と戦った男」宇佐弘文が見た郷土のあり方とは何か。
小千谷地域・山古志・川口・小国の広域で形成された「ふるさとを見直す活動」と郷土の歴史とは何か。その世界観を紹介する。
(250号本文より)
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二、蘇る「わかまち・わがむら」
薭生、横渡、浦柄、竹沢、東竹沢、南平、虫亀、種苧原、南荷頃、小栗山、木沢、峠、塩谷、相川、武道窪、荒谷。
改訂、解説及び図版を加えて令和版として新たな様式を提示する。



小千谷市で今から三十三年前――
伝説の経済学者・宇沢弘文も評価した
「ふるさとを見直す」地域文化活動とは何か?
■「広域文化展と講演会」の概要
【主催】
小千谷市および近隣市町村による「広域ふるさと文化協会」
【協力】
・小千谷市総合文化協会
・広域市町村(小千谷市・川口町・小国町・山古志村)
・古文書に親しむ会
・小千谷市商工会議所
・小千谷市農業協同組合
「広域文化展と講演会」の開催に際し、小千谷市・川口町・小国町・山古志村の首長は、それぞれどのような地域文化観を持っていたのか。
当時のパンフレットに記された祝辞からは、首長たちがいかに郷土文化に向き合っていたかを読み取ることができる。
宇沢弘文が評価したのは、地方創生や官民共創にありがちな「人が集まるだけの場づくり」とは一線を画す、根源的な地域参加の在り方である。
「ふるさとに生き、ふるさとを守り、豊かな農村を守る」――この視野のもとに、人々が地域の歴史や文化に自ら関与するという実践的な動きがあった。宇沢は、これを真に「豊かな社会」への試みとして見出したのである。
地域住民の中に、「コミュニティと農村、郷土の歴史・文化は一体である」という概念が生まれ、共有された。そのような思想的背景こそが、この取り組みの核であった。
郷土史が本来の姿から乖離し、創作として用いられることは、地域の歴史的アイデンティティを徐々に損なっていく。
近年では、地域創生や官民共創の名のもとに、活動や事業の正当性を補強するために歴史が用いられる場面も見られる。
それが検証を伴わない再構成であった場合、たとえ善意であっても、歴史のもつ重層性や連続性は断たれ、地域社会にとっての「礎」として機能しなくなる。
やがてそのような歴史の使い方が常態化すれば、いずれ「郷土を失う」という事態すら現実になりうる。
それは、過去を守るはずの言葉が、未来を見誤らせる道具となることを意味している。
郷土史の創作と、学問的な「解釈の多様性」とは本質的に異なる。
歴史的根拠に基づかない解釈は、史実から逸脱した物語となり、それが広まるほどに、やがては地域の理解や評価そのものに影響を及ぼす。
そうした流れを誰が担っているのか、その意識は、行政や地域で活動する当事者こそが最も理解しているはずである。
地域文化に関わるすべての立場において、歴史を尊重する姿勢がいま、あらためて問われている。
各地で進む官民共創の事業の取り組みは、活動家と行政、そして一部の地域住民との結びつきを「コミュニティ」と見なしてきた。
だが、その実態は、郷土の歴史と文化を破壊した要因そのものであった。
「さまざまな知識、歴史、文化をつなぐ」ことが目的とされる環境づくりは、もしその前提が「創作」に基づいていたとしたら、結果としては何も生まず、何も残らない。
中越地震20周年「山古志つながる大作戦」で紹介された元山古志村長・酒井省吾氏の言葉
> 「私はよそじゃ暮らせない。ここで生まれて、山古志の土になる。」
この言葉には、単なる標語には還元されない、歴史・文化への深い実感が込められている。
酒井氏は、かつて「ふるさとを見直す」広域ふるさと文化協会の活動に賛同し、地域文化の継承を支えてきた。現在も小千谷市総合文化協会の顧問として、民間による地道な文化活動を支援し続けている。
「コトバ」は、単なる「文字」ではない。
それは暮らしとともに生きてきた、郷土の歴史と文化そのものである。
地域性豊かな個性とは、歴史と文化に裏打ちされた農村の内発的な特質であって、見た目の派手さではない。
錦鯉や牛の角突きだけが山古つ志の個性なのではない。
その背後にある歴史と文化は、いまだ可視化されていない。






『小千谷文化』250号
❴ 内容の概要❵
「小千谷文化」第250号の主題は、「伝説の経済学者、宇沢弘文と小千谷の関連」を中心に、「社会的共通資本」や「ふるさとを見直す活動」を通じて地域の歴史・文化と現代的課題(SDGsや地方創生)を結びつける内容です。以下に主要なポイントをまとめます:
◎主題と焦点
宇沢弘文の紹介: ノーベル経済学賞に最も近い日本人と称される宇沢弘文(1928-2014)の思想(「社会的共通資本」)を、小千谷の地域特性や歴史と結びつけています。彼が33年前に小千谷を訪れ、講演を行った背景や、「自然環境・社会環境の破壊」を防ぐための「大切なものをお金に変えない」という理念が強調されています。
地域との関連: 小千谷や周辺地域(山古志、川口、小国)の「ふるさとを見直す活動」を、宇沢の理論と結びつけ、地域の歴史・文化が「人間性の宝庫」として位置づけられています。地域の個性やアイデンティティを守るため、創作された歴史や観光資源に頼らないアプローチが提案されています。
現代的課題との接続: SDGsや地方創生、官民共創のあり方と対比させ、郷土史の適切な利用や地域コミュニティの重要性を論じています。中越地震後の地域の変化や、歴史的叙述の歪みを批判的に取り上げています。
◎構造と構成
第1部(宇沢弘文と小千谷): 宇沢の思想(社会的共通資本)と小千谷訪問の背景、講演の意義を解説。地域の「ふるさとを見直す活動」が宇沢理論とどう連動するかを探ります。
第2部(歴史・文化の観点): 地域の歴史・文化を基盤としたコミュニティの重要性を強調。桜井徳太郎や「広域文化」創刊号を引用し、歴史的・文化的な視点から地域の個性を守る姿勢を提示した。
補足・解説: 地域の地名(薭生、横渡、浦柄など)や歴史的背景を詳細に記述し、「小千谷地域の起源」や「村落空間の復元的研究」との連続性を維持する。




