📖 『小千谷文化』第255号を発行しました。

(令和8年8月)


今回の巻頭では、
「小千谷地域の起源と再生」
―歴史・文化の復元と広域的視点―
を掲げ、これまでの研究を踏まえて、
「身分的多元性と小千谷地域」
という視点から地域社会を捉え直します。

今回の表紙を飾るのは、
地域に残された近世の古文書です。


そこに記された一つ一つの文字や名前、印、記録は、単なる「昔の資料」ではありません。
村には誰が住み、どのような役割を担い、どの家とどの家が関係し、村がどのような仕組みで成り立っていたのか――。
郷土の歴史を知るためには、こうした史料を読み、つなぎ合わせ、そこから過去の地域社会を復元していく作業が欠かせません。

本稿では、
・市町村史編さん後の郷土史の変化
・文化行政と歴史の資源化
・「行政空洞化と物語化」の構造
・身分的多元性から見た地域社会
・歴史の検証可能性と知・記憶の自治
という五つの視点から、小千谷地域の歴史と現在の郷土史を考察します。

歴史は、地域の魅力を伝える「物語」として語られるだけではありません。
史料から地域社会の構造を復元し、何が分かり、何がなお問われているのかを確かめることで、歴史を検証可能な知識として次の世代へ残すことができます。

255号では、こうした視点から、小千谷地域の歴史・文化と、これからの郷土史のあり方を問い直します。

歴史をわかりやすく伝えることは、決して悪いことではありません。
では、その過程で、史料から見えていた複雑な地域社会の姿や、まだ解決されていない問いはどうなるのか。
本稿では小千谷市を一つの事例として、
「研究対象 → 文化資源 → 地域の象徴」
さらに、
「歴史 → 歴史の単純化 → 物語」
という変化に着目します。

そして、これまで『小千谷文化』251~254号で展開してきた「身分的多元性」の視点から、地域社会を一人の人物や一つの価値だけで捉えることの問題を考えます。

巻頭メインに続く補足論考では、時水村・時水新田の庄屋伝承を取り上げ、天和検地帳などの記録から、庄屋家や屋敷の所在、村落内部の関係を復元的に検討。

さらに、「小千谷」という地名の語源説明を事例として、歴史研究の中で残されていた「問い」が、行政的な説明や普及事業の中でどのように整理され、一つの標準的な説明へと収斂していくのかを検討しています。

255号が問いかけるのは、
「正しい歴史を一つに決めるにはどうするか」ということだけではありません。
史料から何が分かり、何がまだ分からないのか。
そして、その問いを次の世代が検証できる形で残すにはどうすればよいのか。
郷土史を「地域の物語」として消費するのではなく、地域社会の成り立ちを問い続ける営みとして捉え直す。

255号では、これまでの研究をさらに一歩進め、「知・記憶の自治としての郷土史」**という視点から、現在の小千谷の歴史文化と郷土史のあり方を考えます。
『小千谷文化』第255号、ぜひご覧ください。