「伝説とは」
コトバンク
ブリタニカ国際大百科事典 の解説
言い伝えのすべてをさす場合もあるが,学問的には語り物や昔話とも区別して,狭い範囲の特殊な語り方だけをさす。伝説の特徴としては,(1) 具体的な事物,場所と結びつけて語られる,(2) 語る人も聞く人もそれを信じて語られる,(3) 絶えず歴史化され合理化されていく,(4) 定まった語り方の型がなく伸縮自在である,などがあげられる。伝説は地名と結びつき,信仰と関係するものが多く,この研究を進めることの意義は大きい。日本の伝説を,語られる対象物によって分類すると,(1) 木の伝説 (傘松,矢立杉 ) ,(2) 石の伝説 (手形石,足跡石) ,(3) 塚の伝説 (糠塚,山伏塚) ,(4) 水に関する伝説 (機織淵,弘法清水 ) ,(5) 坂,辻の伝説,(6) 山の伝説 (布引山,飯盛山) ,(7) 谷,沢の伝説 (姥ヶ谷,平家谷 ) ,(8) 島の伝説 (夫婦島,女護ヶ島,鎧島) ,(9) 森や野の一隅,古い屋敷跡などに結びついた伝説 (隠れ里,長者屋敷) ,(10) 社寺,堂閣,旧家などに関する伝説などがある。

『ものがたり おぢやの伝説』(昭和54年)漆原敬造氏に書き換えられた小千谷市時水の伝説は、『小千谷の伝説』(1985恒文社)の五十嵐秀太郎氏によって、さらに全く異なる物語が作成され、新しい物語があたかも言い伝えであるかのように差し替えている。五十嵐氏は、勝覚寺の「杉と松と藤」という誰も想像すらした事の無い物語を作った。村の由緒伝説を寺の由緒伝説に書き換えた。
伝説の特徴『(4) 定まった語り方の型がなく伸縮自在である』の解釈を取り違えたもので、伝説が結び付く地名や信仰を読み込む知識がなかったと言える。このことは学問的にも反する見方に通じ、一趣味人が空想で思い馳せるのと同じである。
勝覚寺は、伝説となる古来の信仰対象の寺院ではなく、中世寺院が廃れ再興によって創られた新しい空間を受け継ぐ寺院と言える。
時水の言い伝え「お藤お松お杉」は、伝説の定義にある"語りや昔話とは区別されるも"ので、学問的に位置づけられる狭範囲の特殊な語りで、古来からの信仰と地名に結び付き研究を進める意義を持つ地域史となる。この伝説の主役に対し、時水勝覚寺はあくまで受け継いだ脇役でしかない。勝覚寺もまたこの伝説のあり方、地域との結び付を読み込むことができず、本来の伝説の姿を伝えることを地域のコミュニティーから学ばなかった。真宗大谷派三条教区三条別院のホームページでは、〘境内の一角に、色白の娘と化して本願寺に奉仕に行ったという伝説をもつ「お藤」があります。杉の大木に巻き付いたもので5月中旬に白滝のように咲きます(樹齢300年ほどか)。〙という伝説の意味をなさない説明が一人歩きしている。