健全な自治体は、五十年に一度、自治体史を編さんする。



新潟県内は、昭和の編さん事業で、1961年出版の『守門村史』穴沢吉太郎編著が雛形とされ、新しい自治体史の編さん事業が活発となった。
戦前から戦後にかけての旧来の町史編さん事業は昭和三十年代まで続いていたが、『守門村史』が示した新しい自治体史の方向性は、昭和四十年代の『小千谷市史』をはじめ、各市町村史の編さんでく繋げられてきた。
新潟県内で近年刊行された自治体史

『上越市史』1993~2005年(平成5~
『塩沢町史』1997~2003年(平成9~

『湯沢町史』2004~2005年(平成16~

『六日町史』2011~2018年(平成23~
昭和50年代の『新潟県史』編さん事業で頂点を迎えた昭和の編さん事業であるが、近年もこの流れが踏襲され、どの自治体も新しい自治体史の方向性を見出すことはできていない。
特に『上越市史』は、県内でも大規模な編さん事業でありながら、昭和の編さん事業を踏襲するという意識が強く表れていた。
全国歴史資料保存利用機関連絡協議会の会誌『記録と史料』にこの流れとなる記述を見つけたのでここに紹介する。
書 名:記録と史料 第17号
編 集:全国歴史資料保存利用機関連絡協議会編集・出版委員会
発 行:全国歴史資料保存利用機関連絡協議会
発行年:2007年3月30日
以下、上記会誌より抜粋。
アーカイブズネットワーク
「上越市史編さん事業から公文書館準備室へ」
1上越市史編さん事業
上越市史編さん事業は昭 46年の高田市と直江津市が合併し誕生した上越市政三 周年記念事業として、平成 年度の準備期間を経て、平成 年度から同16年度まで行われた。
上越市域ではこれまでにも度々の自治体史編 さんが行われてきた。戦前には、大正3の『高田市史』、大正6 年『新道村誌』、昭和 6年『津有村誌』、昭和 9『和田村誌』などがあり、戦後も昭 26年『金谷村』、昭29年『直江津町史』、昭和33年『高田市史』(第一 ・二巻、昭和55年第3巻)、昭和36 『 三郷村史』、そして平成 『上越市史』(普及版)が 行されている。新潟県内全体では、昭和40年代から自治体史の新しい編 さんの動き始まり、当時11 を数えた市町村の大半がこの事業に着手 した。昭和50代に入ると新潟県史編さん事業も本格化し平成 年度まで15年間継続するが、この時期が県内の自治体史編さん事業もピークであった。 こうした自治体史編さん事業の興隆は全国的な動向でもあった
が、新潟県内にあって も平成に入ると 急速に
終息化する。このことから、上越市史編さん
アーカイブズ ・ネットワーク 33 刊行された上越市史全巻事業は全国的に見ても県内的にみても最終盤の取り組みに位置する。
(以下 略)
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この記事は、県立文書館から上越市史編さん室、上越市文書センター長を勤めた故山本幸俊氏の記述である。山本氏は、経歴からもうかがえるが、史料保存の研究に尽力された。上越市での文書センターにおける史料保存のあり方は、地域史における史料保存の最先端であるとも言える。
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新潟県における昭和四十年代以降に見られる各地の自治体史編さん事業は、一区切りを迎えている。新しい自治体史の方向性は見出せていなが、上越市のような自治体史編さん事業と史料保存が、新しい地域史編さんのあり方を示しているのかもしれない。
昭和の自治体史編さん事業は、あまりにも地域史料を疎かにしてきた。
文書館などで史料保存の重要性が言われるようになってからまだ二十年余りしか経っていない。昭和から平成にかけての編さん事業で、博物館など箱物を建てた自治体も少なからず見られるが、文書館的な役割を担い地域史を重視した博物館は存在しない。一例を取り上げれば十日町市史編さん事業がある。縄文遺跡など古代以前ものは盛んだが近世以後の地域史にはあまり関心がないようである。かつて、某市の古文書閲覧担当の学芸員で、古文書の表題も読めない担当に出会ったこともあった。
市町村には、中近世に精通した専門家も少ないように思われる。旧石器、縄文~時代が下っても中世遺跡専門と言ったところである。小千谷市史編さん事業に至っては、すでに半世紀過ぎたが、索引は不必要とされ一般公開されている目録も存在しない。後に索引集が発行されるが、間違いも多く、偏った記述の市史でありながら、新たな地域史編さんと史料保存の動きすらない。昭和の編さん事業で画期的な市史でありながら、新潟県の自治体史のなかで最も時代に取り残されているのが『小千谷市史』ではないだろうか。