『ありのままがあるところ』(福森伸著)を読みました。
著者の福森さんは、複合型の福祉施設しょうぶ学園の施設長であり、この本ではそこで生活・活動する利用者の皆さんやスタッフの皆さんとの歩みを経て、クラフトやアート作品、音楽活動が国内外で高く評価される現在の姿に至ったのか、人が真に能力を発揮し、のびのびと過ごすために必要なこととは何か、改めて「本来の生きる姿」とは何かを問い直しています。
しょうぶ学園のことを知る機会があり、読んでみることにしました。
この本から学んだことは…(以下、本文抜粋)
・人間は、価値のある何かに向かっている。人がものをつくることは生きる上で大切なこと。
・心がその人の柄を決める。
・民藝の心は、森羅万象に学ぶ自然体の考え方や真の美や調和について深く繋がり、人間力と本能の力を育てること。
・直感的な感覚を養うためには、良い物を見るという修行によって「感じる=情操」を育てることと、人や文献から学ぶ「知る=知識」ことの両面が大切である。
・「福祉」の語源的意味
思想や価値観の違い、社会のさまざまな矛盾のただ中にあって、障がい者や高齢者といった枠を超えてすべての人間が平和で、自立した精神を重んじながら旅するように暮らすといった思いを照らすこと。
・無形のものづくりという発想
形に残る作品だけでなく、その人らしいアクションそのものが生き方、表現として肯定され、他者から全人格が認められることによって、自立という環境を獲得することにもなる。
・アートの存在意義
作品を見て、隠れた人間力や見えない世界の表現を通して勇気をもらったり、自分の創造性を掻き立てられるといったフィードバックがあること。
・同じルーティンの継続に安心感や心地よさを感じ、それで心の落ち着きを得る。
今が幸せならそれを守るという考え方もある。
・無防備で壊れそうなかけがえのない心を持っている自分を、自身が愛することを失ってはならない。
・支援者という介入者によって社会的価値を生み、作者と共生しようとする試みは社会福祉において非常に重要な意味がある。彼らの考えが他者や社会に正しく伝えられることが重要。
・自立とは、自分のしたいことの実現のために向けた手段があること、あるいは向かっている環境がある状態。自立の柱は「自分は自分のままである」ということ、そこに作られるべき。
・福祉施設は、社会にはない感覚のエッジに立つ人たちのためのアフォーダンスを創り、守ることができる数少ない場所。
・新しい福祉観→ソーシャルインクルージョン
人権や信条、ジェンダー、高齢、性的指向、障がいに関わらず、だれでも地域で主導権を持つという概念。
・インクルージブな社会の実現のために必要な環境
<条件>
①人の行為の価値観の違いを尊重する環境
②自分自身の可能性に向かう環境
③時間のエネルギーを大切にする環境
④人のエネルギーを大切にする環境
⑤心地よいコミュニケーションがある環境
⑥快適な自然環境
⑦感性豊かな環境
<方法>
①社会システムに知的障害のある人の長所を組み込むこと。
②社会システムから一般人の短所を減らすこと。
・独創性は、自分の意思を表明し、意見や考えが違っていることをお互いが尊重しながら「調和」するところに生まれる。
(ここまで)
本当にさまざまな捉え方があるのだと、改めて考えさせられる内容でした。
知識が増えるほど、自分らしさがなくなっていく…深いなあ。