カフェで一人、ケーキをつつく。
 
 
「はぁ、…買って帰ればよかった」
 
 
いつもはあたしを幸せにしてくれる甘いもの。なのに今日は味がよくわからない。
 
 
きっとそれは、周りから聞こえてくる言葉のせい。
 
 
「…どうしていらないなんて言うんだろ」
 
 
そう考えて、出た答えはとても簡単なもの。
 
 
だってみんな、関係ないのだ。
 
 
自分はヒーローに助けられたことなんてないから、だから、より効率よく、より正確に、悪を叩きたいのだ。
 
 
悪が消えればいいのだ。
 
 
「同じ人間なのにね、」
 
 
からん、とアイスコーヒーのグラスをかき混ぜる。
 
 
「正義を盾に悪を殺すなんて、」
 
 
犯罪者よりも、あたしは一般人の方が怖い。
 
 
ヒーローの存在を否定されるより、ルナティックを肯定する世界が怖くて仕方ない。
 
 
「悪の基準より、正義の基準の方が難しい」
 
 
本当にそう思う。
 
 
それにルナティックは悪を消すだけで、誰かを救ってくれるわけではないのだ。
 
 
たとえば、あの時のあたしはワイルドタイガーがいたから助かったわけで。
 
 
だから、ヒーローがいなくなったら誰も市民を助けてはくれないのだと思う。
 
 
市民を第一に考えてるヒーロー。
 
 
そんな彼等を簡単に捨てようとする。
 
 
「なんだか泣けちゃう話だよ、ホント」
 
 
深くため息をひとつ、
 
 
たいして手をつけていないケーキを置いてあたしは席をたった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
愛とは一方通行なものなのだ。
 
 
(あたし達が必死に誰かの命を救っているのに、世界は奪うことを優先するのだ。)