私は、まだ若く30歳前の頃のことでした。当時私は、転職の
ことでひどく悩んでいました。
ある日、その事を今は亡き母に話しました処、母の実の弟に
相談したらどうか、と言われました。
私は子供の頃この叔父の工場でよく遊んでいたことを憶えています。
叔母には可愛がられていましたが、この叔父は当時まだ現役でしたので、
親しく話したことはありませんでした。
実は、私の父は私が1歳の誕生日の月に赤紙招集により南方戦地への
輸送中に輸送船内で砲撃に会い戦死していましたので、母親の
親族達も私達兄弟には色々と気にかけてくれていたのだと思います。
私が相談する頃は、叔父はすでに現役を引退して隠居生活に
入っていましたので私の申し出にも快く応じてくれました。
その叔父に悩みを相談した処、具体的には申し上げませんが、
なんと、物事は「前から見る」のと「後ろから見る」のでは、
こうも見える世界が違うのか・・・と驚きました。
そして、人というものはこんなにも物事を深く考えられるものか、
と驚くとともに強烈なショックを受けました。若い頃の私にとって
想像を超えたものでした。
そしてその時、将来年を取った時に、このような形で世の中の
役に立てるような人間になれたらなあ・・・とおぼろげながら
考えていました。
その気持ちが、60歳を超えた頃ふと頭をよぎりました・・・