十代、二十代、三十代、四十代(今年中に終えてしまう…)と、聴き続けているものが三つある。

・モーツァルト

・デューク・エリントン(含、楽団メンバー)

・YUKI(含、JUDY AND MARY)

これまでの人生が楽しいものになったのはこれら三者のお陰だとすら思う。心からそう思う。


モーツァルトについてはこれまで何度も触れているし、エリントン(やはりブラントン=ウェブスター時代ですよね)についてはいずれ取り上げる予定なので、今回はYUKIについて。

その魅力は尽きない。
包容力を有した光り輝く声、ヴォーカリストとしての引き出しの多さ、そして、聴き手のなかで自在に結びつき多様な宇宙を作り上げる歌詞。
つまり、無敵である。

以上。
だけど、これではあまりに素っ気ないので、一興として「ソロ以降の10曲」を思い切って選んでみたい。
(年代順です。コメントは全く私的な戯言でして、長短ありますが特に意味はありません。)

●「愛しあえば」(アルバム『joy』〔2005年〕収録曲)
 いつ聴いても「愛しあいたい」の後に来る、一番とニ番の歌詞の「差異と一致」にドキッとさせられる。

●「ワンダーライン」(シングル〔2007年〕)
 現在、天空存在(空が擬人化され、超越性を有したもの)についての専門書(要するにペッタッツォーニ)を訳しているのだが、この曲と響き合うイマジネーションがいくつもあり、日々驚いている。

●「笑いとばせ」(アルバム『megaphonic』〔2011年〕収録曲)
 とても気持ちの良い曲。晴れた日に秩父宮ラグビー場へ試合を見に行くとき、決まって頭のなかで流れる(実際に歌われているのは東京都庭園美術館周辺なのかもしれないけど)。この頃までは、好みの曲が重なったり、行ったライヴの日が同じだったり、一部の学生たちと話が合った(学校において、学生との年齢差は開くいっぽう…)

●「君はスーパーラジカル」(アルバム『FLY』〔2014年〕収録曲)
 彼女の歌唱はよりしなやかに、より深奥まで届くようになった。絶品。

●「ポートレイト」(アルバム『FLY』〔2014年〕収録曲)
 大好きなアルバムより。「奪うなら急いで」…感服である。ちなみに今回、泣く泣く落としたのが「It's like heaven」。

●「Night & Day」(シングル「tonight」〔2015年〕カップリング曲)
 「神様も どうぞ今日は探さないで」。ね? 彼女の歌には天空存在がいっぱい。

●「しのびこみたい」(アルバム『forme』〔2019年〕収録曲)
 ミディアムスローの佳曲。真夜中に聴くと、とりわけ胸に沁みる。お酒片手に、といかないのが(ほぼ)下戸の辛いところ。

●「Wild Life」(アルバム『パレードが続くのなら』〔2023年〕収録曲)
 この一年間で間違いなく最も再生した曲。エンドレスにしていた日が何日もあったほど。この曲の中毒性はおそらくコーラスに隠されている。南田健吾によって丁寧に作られたサウンドの上で、彼女の声が舞う。追いかけて手を伸ばしても決して届かない。まさに飛天である。
 主題は旅。そういえば先日、ある方がこんな話をしてくれた。「可能な限り旅をしなさい。身体が動かなくなっても旅の回想だけで老後を過ごせるから。それに旅は自分が何者でもないことを教えてくれる」。この言葉をいつまでも覚えておきたい。

●「金色の船」(アルバム『SLITS』〔2024年〕収録曲)
 一昨日発売のニューアルバムから。この曲はヤバい(こう言うしかない)。初めて聴いたのが電車内だったのが失敗だった。出征したまま戻って来なかった愛しい人のことが歌われていると受け止め(こうした解釈も決して不可能ではない)、そこに、さだまさし「片おしどり」における老婦人が繋がってしまったのである。俯いて顔を隠そうとした僕を、向かいの席の中学生たちが不思議そうに見ていた。そりゃそうだよね…ホントごめんなさい。

●「One, One, One」(アルバム『SLITS』〔2024年〕収録曲)
 同じくニューアルバムより。作詞・作曲YUKI。ひとつの到達点。

この曲に耳を傾けていると、若い人たちにこう伝えたくなる。


これから素敵なことがたくさんあります。

どれだけ回り道をしてもいいです。

とにかく生き続けてください。


あくまでも、今日の時点での10曲である。やはりエレクトロニカが多めだし、見事に偏っている。おそらくどの聴き手とも完全には重ならないだろう(ここが彼女のすごいところ)。

曲を選びながら再認識したこと。
年齢を重ねるのも悪くない。

チャオ、ア・プレスト。
(じゃあ、また近いうちに。)