「I/O」の世界観はどこから来たのか? | 新津章夫 Official Blog 《迷宮の森》

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いよいよ1週間後には新津章夫の未発表音源盤第一弾「EARLY MINIMALISM 1973-78」が発売になる。今から待ち遠しい限りだ。

 

「EARLY~」及び「LATE~」に至るすべての音楽はファーストアルバムである「I/O」を基点としている。最初から聞いても最後から聞いても同じに聞こえる「オレンジ・パラドックス」、倍速ギターのテクニックの粋を集めた「光のオルゴール」、抒情性と荒々しいディストーションギター、としてバロックが混然一体とする「未来永劫」、細野晴臣さんの「ろっかまいべいびー」のオマージュ「天気雨」、そして、鳥のさえずりから森の小動物の鳴き声、さらには雅楽の笙、篳篥までをギター一本で再現した「迷宮の森」。

 

パラレルに並べるとまったくまとまりのない一曲一曲を「I/O」という一枚の物語にまとめるのには、大きく営業を受けた2枚のアルバムがある。

 

ひとつはプログレバンド、YESのキーボード、リック・ウェイクマン脱退後に加入したパトリック・モラーツが1976年に発表したソロアルバム「ストーリー・オブ・アイ / The Story of I」。聞いていただければすぐに共通性を見出せると思うが、YESの流れをくむプログレ、サンバ、エスニック、欧州的な抒情性ありと彩り豊かなアルバムだが一貫性を感じる。

 

もうひとつはオーストラリアのバンド、セバスチャン・ハーディの「」(1975年)と「フォー・モーメンツ - Four Moments  / 邦題『哀愁の南十字星」と「ウィンドチェイス(1976年)。こちらはフォーカスのようなハモンドオルガンとギターによるプログレ・バンドで、アルバム邦題のように哀愁に満ちたメロディが特徴的だ。

 

この2枚を新津章夫に「アルバム構成の参考にしたらいい」とプレゼントしてくれたのが「I/O」のスーパーバイザーである音楽ライターの岩田由記夫さんである。細かい話だが、新津章夫のギターの特徴のひとつにベンド(昭和名、チョーキング笑)でダウンする時にもピッキングする奏法があるのだけど、岩田さんはすぐさまセバスチャン・ハーディのギタリストのマリオ・ミーロとの共通性を感じたという。ちなみに、マリオ・ミーロはアングロサクソン系ではない。両親はイタリアからの移民だ。そういうDNAの部分にも欧州人の血が騒ぐのだろう。奏でるメロディがアメリカやイギリスのギタリストとは異なる。

 

この2枚のアルバムをむさぼるように聴き、「I/O」の世界を構築していったのが1976~1977年だった。

 

パトリック・モラーツ 「ストーリー・オブ・アイ - The Story of I」

 

 

セバスチャン・ハーディ「フォー・モーメンツ - Four Moments  / 邦題『哀愁の南十字星」