1年前の今日はマロンと最後に散歩した夜。


明らか調子の悪そうなマロンを外に連れ出すつもりはなかったけれど、オシッコの量の少なさや排便がなかったのが気になり、散歩する気があれば少し連れて行こうかとキャリーバッグを下ろしたら、シッポを振ってキャリーに寄ってきた。



家の周囲は交通量が多いから、車で5分程度の公園まで連れて行った。


その公園に着くといつも同じ場所で真っ先にオシッコをする。



あの夜も、いつも程ではないけれど、音が聞こえる程度には排尿して、自ら歩き出した。そして途中でも何回かオシッコが出て(足上げシッコしてたわ)、2回少しの軟便が出た。


お尻が汚れたから、拭いたんだ。


抱き上げようと思ってたけど、うんちの始末してる間にマロンは歩き出していた。


かつてなら、とっくにグイグイ引っ張られてるであろうに、うんち袋を縛ってしまっても、歩き出したマロンはまだ私の数歩先だった。



何丁目何番地程度の広さの公園の、ほんの一辺。


それですら端から端までは歩けないだろうと、マーキングポイントの一つである、角の消火栓まで抱いて連れて行った。


片足をあげようとして、よろけたマロンを支えた。クンクンと匂いを嗅いで、もういいやとでも言うように、マロンから歩き出した。


ゆっくりゆっくりした足取り。時々立ち止まっては、公園や、反対側の街路樹に目を移して、また歩き始める。


その様子はいつものマロンじゃなかった。


まるでいつもの散歩道に別れを告げているかのように思え、怖くなってマロンを抱き上げた。



「今度また来ようね。今日はもう帰ろう」



あの夜は曇っていた。


公園から歩道にはみ出たマーガレットを見て、マーガレットって夜になっても花は閉じないんだなと余計なことを思ったりもした。



同じ時刻じゃなかったけれど、今夜、一人、最後の夜に歩いた道を、あの夜をシミュレーションしながら歩いたみた。


車から降りて、オシッコポイントまでの体の動き、オシッコが終わるまで待っていた時の立ち位置、マロンとの距離、何気ないことなのに、体が覚えていた。



この辺でもオシッコして、この辺でうんちして…


ここで抱き上げて、消火栓のこの辺に座ってマロンを支えて…



そしてあの夜マロンは歩道の真ん中を歩き出した。



いつもなら、出ないでしょってのにマーキングポーズしたり、クンクンしたりするために、端を歩くのに。



マロンと最後に歩いた道の両端には、今夜、マーガレットが咲いていた。


あの夜はどうだったのか、よくわからない。



ただ、自分のパーカーがうんちやシッコで汚れようが気にもならず抱き上げて歩いた、そんな愛しい愛しい犬がいた。