漫画家?絵描き?教授?:佐川美代太郎 Part2 | 懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

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懐かしい’60s’70s’80s
ひときわ輝いていたあの時代の思い出のエッセイ集です。
毎週土曜日更新予定です。

 今日は。

 

 関東地方では、やっと桜が満開ですね。

久しぶりに桜の中、入学式を迎える小学生が見られますね。

 

 今年から月の初めの回は、大瀧詠一のアルバム「ナイヤガラカレンダー」から1曲お届けしています。
4月は『Baseball-Crazy』です。
  〇大滝詠一 Baseball-Crazy
  https://www.youtube.com/watch?v=K0jk9WSkXTE&t=2s

このアルバムが発表された頃は、プロ野球の開幕は4月でした。
現在は年間の試合数が増えたこともあり、3月開幕なので、少し季節がずれていますね。

この曲の途中で、懐かしい「クラウン ライターズ」球団の名前も飛び出しています。

<Part2:漫画家?絵描き?教授?佐川美代太郎>
 かなり間があいてしまいましたが、Part1「手塚治虫が「きれいな色の秘密を教えろ」と迫った漫画家」(リンク)に続いて、京都精華短期大学 美術学科教授以降の佐川美代太郎をPart2としてお届けします。

 佐川は、自ら「マンガを描く」エンタテイメント作家から「マンガの描き方を教える」教授へ軸足を移しています。

 そして佐川の表現は 「線画」から「丸い線」➡「精細」➡「色表現」➡「版画」にまで変化しています。 
又描くジャンルは漫画から「大人の絵本」「日本画」「立体物」 まで幅が広がっていきます。
 そんな佐川を今回も佐川美代太郎企画展図録で詳しく見てみましょう。

●第三章 学ぶ・教える
 1973年京都の京都精華短期大学 美術学科に「マンガクラス」が設置され、50歳の時に、教授として佐川に白羽の矢が立ちます。

 それから20年以上学生の指導にあたります。
 「漫画の基本は絵画」「絵が描けなければ漫画は描けません」が佐川の持論でした。
 
 (Writers4 補足)
   「少年ジャンプ」編集長が『キン肉マン』ゆでたまご に、あまり絵がうまくなるなよ、と 注意しているのを聞いたことがあります。
 描かれるマンガによっても異なるのかもしれませんが、佐川とあい反する指導をしているのが興味深いですね。

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 佐川は大学教授の傍ら佛教大学に入学します。
 中国哲学をさらに深く理解するには、仏教を学ぶ必要がある と考えたといいます。
知識を得るためには自分で調べるだけでなく、その道の先達に師事し徹底的に学ぶ、佐川が貫いた学びの姿勢でした。

 学生たちを連れて、動物園に行き、一日中動物の絵を描させたといいます。
佐川も学生と一緒となって動物をスケッチしました。
 
 写真)


 スケッチ 31P


 佐川の蔵書には、学生の指導の際や自身の制作の際に使用したと考えられる図鑑類解剖図が多数あります。

 〇解剖図からコピーした図に、鳥の骨や羽の各部の名称を記入し厚紙に貼ったもの

写真) 30

 多数の作品を残した佐川は、その中でもスケッチ類は膨大です。33

  本棚には速水御舟の作品集、ピカソの画集、中国哲学仏教思想に関する膨大な本が並んでいます。

 (写真:速水)


 本にはふせんやメモが書き込まれ、全ての本に目を通していたことがわかります。 


 (補足 Writers4)
 50歳の時に、京都精華短期大学の大学教授になっていますが、その間もマンガは書いたのでしょうか?
絵本は書いています。
  Part1でご紹介した絵本『ぐろう』はそれまでの漫画と同じ白黒で描かれています。

  『ぐろう』以降の作品はカラーが目立ちます。

現在、京都精華短期大学は現在は4年生の京都精華大学になっていて、2000年に竹宮 惠子がマンガ学科の教員に就任し、2008年には学部長に 学長に就任しています。
「京都国際マンガミュージアム」は京都精華大学と京都市の共同事業として整備が進められ、現在は市と大学で組織される運営委員会の下、大学が管理・運営されています。

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●第四章 佐川美代太郎のまなざし
 前回手塚が佐川に「きれいな色の秘密を教えろ」と迫ったと書きましたが、あまり説明をしていませんでした。
 その「色使い」は是非、見て頂きたいのですが、ここではその作品の一部をご紹介します。

 「現場で身をもって 何かをつかみ取らないといけない」 (対談 新井哲 「致知」 367号

 学生たちとともに動物園などに出かけ、自身も率先して動物や植物のスケッチを多数描きました。
 旅先にもスケッチブックを持っていき、そこに暮らす人々や街の様子、市場で買った野菜なども詳細なメモとともに描いています。

 マンガでは、人物や動物などを描く際、特徴的な部分などをデフォルメして描きますが、そのためには物の形を正確に捉えた上で描く必要があります。
 実際に生き物の動きを見るだけではなく、構造についても学び、特に好きなモチーフであった鳥に関しては、鳥類研究所剥製を制作する工房鷹匠などの元に通い、骨格から勉強します。

 なにかひとつのことを知るためには、自身が納得するまで徹底的に調べるのが佐川の流儀でした。
 学生たちや自身の子どもたちにも、「追及すること」の大切さを伝えました。 

 ●佐川美代太郎が描く動物たち 1
  絵画作品、絵本の原画の多くは、パステル水性アクリル絵の具で描かれています。
  何色も色を塗り重ねた上から、先の尖ったものでひっかく「スクラッチ」技法を用いています。

 


  (サイの輪郭線やライオンのたてがみなど)

  (補足 Writers4)

 手塚治虫が教えろと迫った佐川の色使いはどうですか?

独特の色合いですね。

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  佐川の作品には、馬やロバが頻繁に登場。
  幼少の時に、畑仕事や荷運びなど、過酷な条件下で働く馬を多数見た記憶、戦時中に軍用馬の世話をした経験から 「自分は鎮魂のために馬を描かなければいけない」と家族に話します。

 

〇佐川美代太郎が描く動物たち 2

  

(補足 Writers4)

 デフォルメした動物は愛らしいですね。

 

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第五章 「描く」ということ からは次回Part3でお届けします。