コンバット! 軍曹と少尉 | 懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

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懐かしい’60s’70s’80s
ひときわ輝いていたあの時代の思い出のエッセイ集です。
毎週土曜日更新予定です。

最近はメジャーリーグもその他の競技も観客が少しずつ増えてきましたね。

やはり活気が違いますね。

はやくコロナが終息して元の世界に戻ってほしいものです。

 

今週はコンバット!の続きです。もう少しお付き合いくださいませ。

 

コンバット! 軍曹と少尉

 若い人にコンバット!のことを聞いたらけっこう知ってるようですが実態はあのゴキブリ駆除剤のCMが元ネタのようです。
なのであのテーマ曲も知名度が高いのです。

まずは今回、サンダース軍曹ヘンリー少尉の階級について触れておきます。

<軍曹>
 あまりにも有名なサンダース軍曹ですが「軍曹」という地位はどれくらい偉いのでしょうか。軍曹より下には伍長、一般兵、上等兵などが存在するのは知っていました。

 

 軍曹と少尉では位が二つくらい違う程度だと思っていました。会社でいえば課長と係長くらいの差かな、と。
だからサンダース軍曹も大手柄を二つ三つたてれば少尉になれるのではないかと思っていました。ところが軍隊というのは階級が実に細かいんですね。


ちょっとググってみたら軍曹と少尉の間には
軍曹(一等、二等、三等)
曹長(一等、二等、三等)
特務曹長(士官候補生)
下級准尉
上級准尉
少尉
と、こんなに階級があるらしいです。(士官候補生は訓練生なので戦場にはいません)
たしかサンダース軍曹は三等軍曹だからいちばん下っ端なので少尉との間には9つの階級があるんですね。

これではちょっとやそっとのことじゃ少尉にはなれませんね。

 機動戦士ガンダムだと少年兵のアムロがあっという間に少尉に昇進してたりするのでこの現実にはちょっとビックリです。(まあアムロの場合は一人で戦艦を沈めたりと手柄がすごいわけですが…)


<少尉>
 少尉は意外と若い人が多いしエリートのイメージです。
実際その通りで士官学校を卒業すればいきなり少尉として配属されていきます。
だから実戦経験の豊富な兵士に「青二才」とか「新米」と陰口を叩かれ舐められることがあります。
そういう連中を厳しく指導して少尉の顔を立てつつ任務を遂行するのが軍曹の役目です。
しかも軍曹はいつも最前線に行かされ不良兵士や怯える新米兵士を叱咤激励しながら戦うのだから本当に過酷な中間管理職ですね。

私にはとても務まりそうもありません。

 サンダース軍曹とヘンリー少尉の関係は最初から良好ですね。
wikipediaによるとサンダースとは親しい間柄だったが少尉に昇進して少し距離を置くようになった、とあります。
たしかに放映開始の頃はサンダースはタメグチをきいてます。

ただ小隊内でも一般兵がサンダースにもヘンリーにも普通にタメグチなのでこれはちょっと驚きでした。
もっとも英語には明確な敬語が少ないので翻訳者の解釈でそう訳してるだけなのかもしれません。

 さて、今回は傑作と名高い「丘は血に染まった」を取り上げましょう。*途中までネタバレがあります、結末まではネタバレしませんがご注意ください。
「丘は血に染まった」は前後編で第126話、第127話です。
前後編を編集して映画化された作品でもあります。

「丘は血に染まった」 前編 第126話

ヘンリー少尉とサンダース軍曹率いる1個小隊が丘の上のドイツ軍のトーチカを攻略するという話です。

 

 

 トーチカは2か所あり重機関銃で守備しているのに対しヘンリー小隊は小銃と小さなバズーカ砲が一丁だけ。(一般的に戦闘は高い場所に陣取ったほうが有利なのです。)
しかも身を隠す場所がないので近づくだけでハチの巣にされてしまいます。

こんな要塞に一体どうやって近づけというのでしょう。

 ヘンリー小隊はいきなり機銃掃射を浴びサンダース軍曹は足を撃たれ負傷してしまいました。

そこで今回は代わりにヘンリー少尉が前線の指揮をとることになりました。
ヘンリー少尉は中隊長に応援を求めるも余裕がないと断られ、頭ごなしに「早く攻略しろ、ほかの小隊はどんどん進撃しているのだからここだけ停滞は許されない!」とまるで取り付く島もないのです。まるで日本軍みたいな非情さです。
(こういう場合の中隊からの援護としては戦車、大砲、煙幕弾が有力です)

中隊長は中隊長で大隊長にせっつかれてるから焦っているのです。

 部下たちは攻略は不可能だとわかっているから厭戦気分が蔓延していきます。

ヘンリーもまったく同じ気持ちなのですが、だからといって諦めるわけにいかず、終始冷徹な表情で命令を下し、3度の突撃を仕掛けますが半数の兵士が死ぬという悲惨な事態に陥ってしまいました。
 この時、撃たれて死ぬ兵士の視界をカメラワークで表現するのですが、スローモーションでグルグル天地が回り、駆け寄る同僚の顔のアップ。

人は死ぬとき物がゆっくり見えると聞いたことがありますがまさにそんな感じでです。


 最悪の戦況にヘンリーもガックリと肩を落としてしまいました。


「丘は血に染まった」後編 第127話

 

 

 暗澹たる空気が蔓延したところから話は始まります。
ヘンリーは戦車の支援を要請しますが色よい返事がもらえません。
しまいには中隊長から「命令だ、やれ!」といわれやむなく突撃命令を下しますがみな反発します。
やはり問題児カービーが先頭に立って反抗してますね。しかしカービーも成長していて口は悪いもののみんなの心情を的確に代弁してます。でも本当はカービーも少尉の立場を理解しているのです。
 カービーの足りない部分はケーリーが補っていて、この二人はいいコンビですね。


 こうして絶望的な特攻作戦が始まりましたが誰も動こうとしません。

そこへ一両の戦車が応援に駆け付けてくれ、一気に士気が上がり作戦開始!
今回はトーチカ一基を潰すことに成功しますが、残る一基のトーチカのバズーカ砲であっけなく戦車はやられてまた敗走…。

中隊長に対し「援護がほしい。」「早く攻略しろ!」の押し問答が何度続いたでしょうか。
なんとか10分後に煙幕弾の援護攻撃が決まり、5度目の突撃となりましたが今回は壊れた戦車を遮蔽物にできます。

煙にまぎれて戦車の陰からカービーとケーリーの決死のバズーカ砲攻撃でトーチカをようやく壊滅できました。


歓喜にわく兵士たち、ヘンリーは感極まったのか少し潤んだ目をしています。

 しかし、ここで本隊からある命令が入りそれをヘンリーが皆に伝えるのです。呆然とする兵士たち。
はたしてその命令とは?……。

 ……と、まあ途中まではよくある戦争ものなんですがラスト5分に味があります。
戦争の過酷さ、むなしさがよく伝わってきました。
この戦闘でヘンリー小隊は壊滅状態になってしまいました。

わずかに生き残った兵士たちは身も心もボロボロです。

 ヘンリーも無謀な作戦と知りつつ突撃させ無駄死にさせてしまった罪悪感や自分の無力さ、徒労感といったものに苛まれたことでしょう。

でもカービーのように感情を露わにすることも出来ないのです。

 

戦場での中間管理職のつらさが骨身に沁みたことと思います。

 


 今作はサンダース役のヴィック・モローが監督なのでそっちに専念するためなのか、早々に重傷を負って出番が少ないです。が、苦悩するヘンリーを励ますシーンは印象的でした。

 子供の頃、このエピソードを観ていたとしたら戦闘の激しさは理解できると思いますがラストの兵士の心情の奥底まではわからなかったでしょう。
死に物狂いでやり遂げた喜びと喪失感、大人にしかわからない深い人間ドラマでした。

 

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