<銭ゲバ Part2> | 懐かしエッセイ 輝ける時代たち(シーズンズ)

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懐かしい’60s’70s’80s
ひときわ輝いていたあの時代の思い出のエッセイ集です。
毎週土曜日更新予定です。

今日は。

 米バラエティ誌によると、4月23日に全米公開され、2位デビューを飾ったアニメ映画「劇場版『鬼滅の刃』無限列車編」が、今週末(5月1日)は一転して首位を獲得することが確実となったそうです。最終結果はどうなったでしょうか。

 ちなみに、先週首位だったのは、真田広之と浅野忠信が出演している『モータルコンバット』で、3位はなんと、『ゴジラVSコング』だそうです。

 気にしていたら、米映画興収情報サイト「Box Office Mojo」が報じました。「公開2週目の週末となった1、2日(日本時間2、3日)の週末に興収670万ドル(約7億3700万円)を記録し、同週の首位に立ったと。」

『鬼滅の刃』フィーバーは、今度は米国ですか!

 

 

<銭ゲバ Part2>


Part1(リンク)に続いて、「銭ゲバ」を書きたいと思います。
その前に、まず、このYouTubeを見てください。

〇和田嘉訓監督『銭ゲバ』より「銭ゲバ大行進」
 https://www.youtube.com/watch?v=uLKGylsksYE

  僕は、この稿を書くまで知らなかったのですが、『銭ゲバ』の映画があったのですね。
  主演はなんと、唐十郎

 残念ながら、実写ドラマにすると僕は見続けていられません。
なぜか漫画の方が、リアリティを感じます。

さあ、Part1の続きです。

 2.キャラクター
 主人公蒲郡風太郎は、顔だけ、ギャグ(生活マンガ)の絵です。
 蒲郡風太郎は、6等身の体にギャクマンガの顔をのせた、ストーリーマンガの主人公からはかけ離れたキャラです。
 
 顔立ちは、美男子どころか、今までの少年誌の主人公には全くなかったキャラクターです。
 (でも一目で、風太郎とわかります。)
 まるで、生活マンガの『デロリマン』に似ています。
 よく、斜に構えて表現されます。

 描こうと思えば、風太郎を助ける隣の兄さんのように、もう少し、ストーリーまんがポイ絵にできたはずです。
あえてこの顔にしています。
 キャラが強烈すぎて、マンガ以外では、今はやりの『鬼滅の刃』の主人公のようには商品に使われません。

  一方、風太郎を追い詰める作家「秋遊之助」は正義の象徴のためでしょうか、精悍なキャラクターになっています。

 3.絵(丸い絵で、尖がった内容)
 少年マンガなのに、殺人のシーンが割と登場します。
 作品の絵は今までの延長戦の生活マンガのためか、衝撃的ではありますが、残酷ではありません。

 ジョージ秋山は意図的に、生活マンガのスタイルを使って、残酷性を排除しているのかもしれません。

 「ギャグマンガ仕立て」で、ストーリーマンガとする手法は、現在も連載中のみなもと太郎『風雲児たち』があります。
 この『風雲児たち』は1979年連載開始ですから、これに先行する作品ではないでしょうか。
 もっともこの『風雲児たち』はギャグも時々でますが、『銭ゲバ』にはギャグは一切ありません。

  ある方から、ジョージ秋山は絵が下手だと、ご指摘がありました。
 考えてみると、当時の漫画家手塚治虫石森章太郎桑田次郎は絵が上手かったですね。
 手塚や石森の原稿を時たま展覧会等で見ますが、原稿をそのまま飾っても、絵画のようで素敵です。

 今の「少年ジャンプ」のマンガ家は、一種「ヘタウマ」の作家が多く、最近その作品に慣れてしまっていました。
 確かに、70年代の作家の中で見れば、ジョージ秋山の絵は「下手」な部類になるのでしょう。
 ただ、逆に、それがジョージ秋山の場合は「味」であり、この作品『銭ゲバ』にマッチしていると思いませんか?

 4.作品の革新性
  こんな社会問題を扱い、人間の内面を描いた作品はあったでしょうか?
  それも「少年サンデー」という少年誌にです。
  もう今までにないテーマを扱った作品というだけで、作品の革新性は高いと思います。
  マンガの扱うテーマの幅を広げたのではないでしょうか?

  それも描いたのは、今まで『ほら吹きどんどん』『パットマンX』などの生活マンガ(ギャグマンガ)のジョージ秋山ですから、そのインパクトは尚更です。

 5.作品の品格
  手塚治虫が昔から、マンガに対して「品格」を重視しています。
  この作品に殺人の場面はありますが、ギャグマンガ仕立てで、すこし和らげています。
  同じころの『アシュラ』は僕の仲間内では、あまりに残酷で途中で読むをやめたとの声があります。
  実は、僕も少年のころの『アシュラ』の記憶がありません。
  きっと「少年マガジン」で連載されていた『アシュラ』を読み飛ばしていたのだと推測します。
  「銭ゲバ」はマンガに嫌味がないので、普通に読めます。
  
6.僕の評価
 最近、マンが作品を読むのに、「マンガの評価軸」を考えたらどうかかなと思いに5つの視点を考えてみました。

実はPart1から今まで、「1-2どんな作品」~5「作品の品格」までそれに沿って書いてきました。

 

 ここまで来て、この評価軸を見た、相棒のKAITOから「「アカデミー賞」的評価か「カンヌ映画祭」的評価で行くのか」と突っ込みがありました。

 あやうく文学作品的の「カンヌ映画祭」的評価にするところでした。

マンガであることに重点を置きなおしました。

 

修正した結果は次の通りです。
「1.(作品の)面白さ 」「2.キャラクター」「3. 技術(画・画面のきれいさ)「4. 作品の革新性 」「5. 作品の品格」
 (5段階 。但し、+上6、下-1も必要に応じてつける)

 
その評価軸で、『銭ゲバ』を評価してみましょう。


 〇マンガ・アニメの評価(5段階+上6、下-1)
 1.(作品の)面白さ: 4  いい意味では文学的。だた予想不可の展開はない。
 2. キャラクター:  4
 3. 技術(画・画面のきれいさ):  3
 4. 作品の革新性: 5  今までにない、着眼点 ストーリー。マンガと劇画の中間
 5. 作品の品格: 3  あまりに残酷。あえて何度も、進んで読みたいと思えない。
 
ただ、作品としての「総合満足度」4です。
皆様の評価はいかがでしょうか?

7.作者のプロフィール

 


 

1).ジョージ秋山履歴
  僕は、ジョージ秋山について、物の本で読んだことはありません。
  残念ながら、マンガ史においての位置を確立していないのでしょうか?
  困った時のウイキペディアです。
  ウイキペディア: 
  1943年4月27日 - 2020年5月12日)
  1943年、東京都の日暮里で出生。姉、兄、弟、妹それぞれ1人ずつの5人きょうだいの次男。父は腕のいい朝鮮人の造花職人だった。
  第二次世界大戦中は栃木県田沼町に疎開した。10歳のとき父親が事業に失敗し足利市へ転居。極貧生活を経験する。子供の頃から漫画を描き出し、中学2年生で漫画本を自作した。
 
 2)作品
    『銭ゲバ』以外について主な作品を上げてみます。
  『銭ゲバ』以前は、
  ○ガイコツくん(1966年、別冊少年マガジン、全1巻) - 初連載作品 
  ○パットマンX(1967.01~1968.50号)「少年マガジン」
  ○ほらふきドンドン(1969.06    1970.31)「少年マガジン」
  ○デロリンマン(1969年 - 1970年、「週刊少年ジャンプ)
  ○アシュラ 「少年マガジン」(1970.32~1971.22) 『銭ゲバ』と並行して描かれている。」

  『銭ゲバ』以降の主な作品は、
  〇告白(1971年、週刊少年サンデー、全1巻)
  〇ばらの坂道(1971年 - 1972年、週刊少年ジャンプ、全3巻)
  〇ザ・ムーン(1972年 - 1973年、週刊少年サンデー、全4巻)
  〇ゴミムシくん(1972年 - 1973年、週刊少年チャンピオン、全5巻)
  〇浮浪雲(1973年 - 2017年、ビッグコミックオリジナル、全112巻)

 『ばらの坂道』『ゴミムシくん』の記憶は、残念ながらありません。


  ウイキペディアにはありませんでした、『銭ゲバ』と同じく、幻冬舎文庫に次の作品が収められています。
  〇武士道というは死ぬことと見つけたり
  〇聖書
  幻冬舎文庫は主に文学的な作品を収めているのでしょうか?


 3)アシスタント
  僕の「漫画家としての評価軸」も考え中で、、「アシスタントから大成した漫画家はいるか」を候補に挙げています。


  ジョージ秋山のアシスタントから大成した漫画家は出たか?
  ウイキペディアによると、アシスタントには、イエス小池てらお太平葉ツカサク賀すがやみつるがいます。
  すがやみつる以外は僕があまり気にしなかった作家です。

  イエス小池には、少し前に書かれていますが、『漫画家アシスタント物語』というブログがあります。

 ○イエス小池『漫画家アシスタント物語』  https://blog.goo.ne.jp/yesde2/e/94bdb6e8508626c7d6adcfc06ad8537e

  何人かアシスタント務めた作家の中に、ジョージ秋山もでてきます。

  このブログによると、ジョージ秋山は当時、週休2日だったと言っています。
  漫画家が週休二日!凄すぎます。
  「浮浪雲」の生き方なんでしょうか?

 4).師匠 森田拳次

  


  そのジョージ秋山の師匠は生活マンガ家で「丸出だめ夫」「ズーズーC」の作者「森田拳次」だそです。
  風媒花さん(リンク)に教えてもらいました。

  そういえば、「浮浪雲」の雲の息子は、森田拳次の『丸出だめ夫』の主人公「丸出だめ夫」に、丸めがねといい、顔が似ています。
 

 

●エピローグ
 さて前回Part1冒頭「プロローグ」の僕の疑問に戻りたいと思います。

  寺田ヒロオは、さいとうたかをと同じように、作品を諫める手紙を送ったのでないかと推測します。
 これが大人の雑誌への掲載ならば、盟友で無頼派の棚下照生の作品のように、認めたのでしょう。
 『銭ゲバ』が連載されたのは少年誌の「少年サンデー」です。
 1970年代の状況では、中学生には、内容が優れていても、まだ早すぎる内容で、描写も過激で、少年には適さないと。
 皆さんはどう考えます。

 

底本:幻冬舎文庫版『銭ゲバ』

 

 

●付録:

  

 蛇足ですが、2009年に松山ケンイチ主演のテレビ番組もあったのですね。

〇「銭ゲバ」予告編
 https://www.youtube.com/watch?v=58De8dBI0To

これは、2009年に放映されたテレビドラマ『銭ゲバ』の予告編です。
舞台は1970年から、リーマンショック後の2009年に設定が変更されています。

このテレビ番組は、幻冬舎文庫で『銭ゲバ』はテレビ放映の2年前に刊行されていますが、もしかしたら文庫版を読んで、脚本家あるいはテレビ局は映像化したのかもしれません。