西岸良平は不思議な漫画家だ。絵は独特のフィーリングがあるが上手ではない、むしろヘタ。しかし、連載をつづけるうちに『三丁目の夕日』は、ファンを獲得しつづけ、さらに第二のシリーズ『鎌倉ものがたり』もたくさんのファンを持っている。

 

最近はさすがに以前ほどのひらめきはないが、SFやファンタジー系と言ってもよいほど、奇妙奇天烈なネタは相変わらず。

 

そしてなにより、ほっとできる温もり。

 

彼の作品はほとんど持っているが、けっこーエログロなネタも彼のタッチだと不快さはない。どぎつい復讐ものであっても、あの絵柄だとすんなり読めてしまう。動物たちへの深い愛情もこころを和ませる。

 

映画は残念ながら、まったくの別作品としてしか観られないが、仕方ないだろう。アニメでなければ、あの世界は再現できない。

 

今の時代に西岸氏がデビューしようとしたらどうだろう。かなり難しいのではないか。絵がうまくストーリーもしっかりしていないと、認められないだろう。デビューのころは、マイナーな青年の貧乏物語みたいのが多く、素朴さだけが持ち味みたいだった。

 

こういう才能を拾って育てた編集者が素晴らしいと思う。なかなかキビシー世のなかだけど、本当に個性ある表現者を、編集者などは見逃さずに世に出して欲しいと思う。

 

アーティストでさまざまな平均値が高い人間ばかりを認めていては、真の才能ある人や、ホントにオモシロい表現者は育ってこない。

 

「ここがダメ」ではなく「ここがイイ」と見るようにしていかないと。