さて、いよいよハンガリーのブダペストへ。

 

この日、観光が終わってホテルへのチェックイン。一応五つ星のホテルである。近づくと日本語を話す、ハンガリー人の女性ガイドが言った。

 

「あんたたち、今日ダメね。ナポリのナンバーのバスがいる」

「え? なぜ?」

そのとき、お客から質問があり、答えは聞けなかった。

 

なんだろ。うるさく騒ぐから?

しかし、夕食は無事に済み、皆さんお休みとなった。

 

それから…深夜のことである。

室内の電話がいきなり鳴った。

「はい…なんでしょうか」

寝ぼけ眼で出ると、お客のひとりにいきなり怒られた。

「うるさくて寝られないのよ! なんとかして!」

「は?」

 

受話器を置いてモノオトに耳を澄ませた。廊下で人のハナシ声が聞こえる。なるほどうるさい。

仕方ねえと思いつつ、身支度して廊下へ出た。ナポリ人らしき連中が、部屋から部屋へと行き来して、酒呑んで騒いでいる。

 

眉を寄せて「シレンツォ!(静かに) 」と何度か怒鳴った。「分かった分かった」という感じの笑顔がいくつか見られた。そこで、いったん自室に戻った。しかし、しばらくするとまたうるさくなってくる。ケンカ上等と覚悟して、また廊下へ出た。

 

「ドルミーレ! (寝ろ)」「シレンツォ! 」と繰り返した。すると…ひとりの若い男性が両手を後ろにして寄って来る。このヤロー、やるか! とファイティングポーズをとった。

しかし、ワタシの前まで来ると両手を前に出した。片手にはビール瓶、片手にはグラス。そしてビールを注ぐと、お前も呑めと笑顔。

 

いっきにちからが抜けた(笑)。

 

…それからはそんなにうるさくなくなった。ヤレヤレと眠りについた。

 

しかし早朝。

また電話が鳴った。

「…はい」

「ドアが開かないのよ」

「故障ですか? すぐフロントに言います」

「違うのよ」

「ドアの前に男の人が寝ていて開かないのよ」

 

パーティの挙句、廊下で寝たヤツがいるらしい。

 

…ナポリ人とは、こんな連中です。しかし憎めない(笑)。

 

このほかザルツブルクのブリストルホテル(ウィーンにもある、老舗のホテル)の支配人に聞いたハナシもキョーレツ。あるナポリの由緒正しいお金持ちの顧客とモメた。「もう二度と来ない」と言われ、翌日がそのお金持ちのチェックアウトの日だった。早朝、そのお客の出発後、ホテルのすべての廊下にはトイレットペーパーが敷かれていた。

 

またナポリ人ではなかったようだが、スイスで一杯食わされたことがある。マッターホルンの麓ツェルマット。このときは山頂ホテル(展望台にあるホテル。マッターホルンなどの眺めはチョー絶景)に泊まるので、荷物は一泊分だけ。スーツケースは麓のホテル預け。下山した翌朝、麓のホテルで荷物確認をしようとフロントに行った。

 

「ども。

オレらのグループの荷物は? 」

メガネの若いヤツがムズカシイ顔をして答えた。

「…手違いで、スーツケースはドイツまで行ったらしい」

「え? マジ? 困ったなあ」

アタマを抱えて座り込んだ。

 

すると

「ウソだよーん、ほら、こっちにあるよー」

奥のカーテンのかかったところを開いて見せた。

スイスだからと安心していたが、こいつはイタリア人だった。(つづく)