「女の子、どうして、お人形好きなのか知ってる???

 

「わかんない」

 

「お人形はねぇ、お話相手なの。

 みんなねぇ、

 『今日こんなことがあった。どうしたらいいかな』

 と、お人形とお話するの。

 するとね。お返事くれるお人形がいるの。

 でも、大体、そういうお人形って、 

 どこか壊れていたりするの。」

 

「へぇ、そうなんだ。」

 

「でもね。わたしのお話相手、お人形じゃないんだ。

 わたしのお話相手、昔からご本なの。

 ご本の中にもね。お話すると返事をくれるご本とね、

 返事をくれないご本があるの。

 あなたが送って下さったご本ね、

 何を聞いても全部お返事をくれるの。

 だから、大事な、わたしのお人形。

 でも、あちらこちらにちょっとおかしなところもある。

 これ『かわいい』と思えちゃう。

 こんな、ご本、書く人も『かわいい』と思えちゃう。

 

 書いた人には内緒よ。

 わたしっておかしいわよね。

 あなたが書いたのに、

 あなたには内緒とあなたに言っている。

 

 いいわよね。ここ、おとぎの世界ですもの。」

 

 

「いいよ・・・・

 じゃ、ラブレターみたいなものだった???

 

「そう。何回読み返しても、アイラブユーと言ってくる強烈なラブレター。

 そんなこと一言も書いてないのにね。」

 

「うん。よかった」

 

「だから、わたしもアイラブユーって言うの。

 絶対、書いた人には言っちゃいやよ。

 ふふふ、また、わたし、『書いた人には内緒』って、

 書いた人に言っている。

 

 いいわよね。

 わたし、おとぎの国で、

 あなたと会話しているだけですもの。」

 

 

「おとぎの国のアリスさん。もう戻る時間ですよ。」

 

「そうよねぇ。もう、もどらないとね。」

 

「そうだよ。もう夢の時間は終わりだよ。」

 

「そうよねぇ。戻らないとね。」

 

「そうだよ。戻らないと」