会話
わたしは彼女と長々と話をした。
横に並んで、寄り添って。
「癒されるなぁ」
「癒されますねぇ」
「こんなことしていると、また銅像にされるなぁ」
「銅像にされますねぇ」
「でも、いいっか。」
「かまいませんよ。」
「どうして、あんなことしたんだい。」
「わたし、良く見に来てますのよ。ここに。
最初は、びっくりしましたわ。
剣を振って、あなたに切りかかる人いるんですもの。」
「あぁ、ここでは誰でもわたしには切りかかっても、
突き刺しても良いということになっている。
わたしは最強だから、痛くも、痒くもないからな。」
「嘘ですよね。」
「あぁ、嘘だ。」
「本当は痛いんですよね。」
「あぁ、本当は痛い。」
「でも、切りかかってくるその人の心の方がもっと痛い。」
「そうだ。」
「だから、いつも、あなたはこう言うのよね。
相手の頭を撫ぜながら、『もう、気が済んだか。気が済むまでやって良いんだぞ』
そして、最後に必ず『ごめんね』と言う。」
「知ってたのか。」
「知ってますわよ。わたしあなたですもの。
すると、その人『とおちゃ~~ん』と泣き出して、あなたにしがみつく。
それ、見ててね、わたし『この人、本当にここの神さまなんだ』
と思ったの。
でもね、あなた、そのあと、
ちょっと寂しそうな、悲しそうそうな顔をする。」
「そんな、顔するのか。知らなかった。」
「最初はね、ごめんねの言葉の意味わからなかったの。
でもね、見ている内に分かってきた。
その人の心に刺さっているとげに気づいてあげられなくて『ごめんね』
なのよね。それ見ててね、神さまってすごいんだと思ったの。」
「凄くなんかないよ。切りかかってくるまでわからないなんて、
神さまなんかじゃないよ。
俺、糞神だからさぁ、
俺、失格の神だからさぁ、
『ごめんね』と謝るしかないんだ。」
「いいのよ。あなたは立派よ。
わたしが認めてあげる。」
「あなた、ハルマゲドンで失敗したと思っているのよね。」
「そうだ、あれは指揮官の大失敗だ。」
「指揮官が間違えたから、みんなが落ち込んだと思っているのよね。」
「そうだ。すべてわたしが悪い。」
「違うわよ。他の誰も、あなた以上には出来ないもの。」
わたしは泣き出してしまった。
「いいのよ、ここでは泣いていいの。」
「勝ったの??」
「うん、勝った。」
「聖書の記述通りにしたの??」
「うん、そうした。」
「そうしたら、強すぎた。」
「うん、強すぎた。」
「馬鹿よねぇ。最強の軍隊の指揮官が、
自分の軍が強すぎたと後悔しているのよ。
聞いたことないわよ。
おバカさん、ここで泣いてなさい。」
「でも、みんな落ち込んだ。」
「だから、わたしが助けてあげたんでしょ。
ほら、みんな、あんなに楽しそう。」