ホフク前進する男
東京は、一時的でしょうが
暑さが収まりましたね。
つい数日前までの強烈な暑さが嘘のようです。
そんな数日前の暑い日のこと
夫ペーターと外出しようとしたところ
「あ、忘れ物」
と彼は玄関先から家の中に戻った。
私も靴をすでに履いていたけれど
いつも失くしもの、探しものをしている夫は
今回もきっと時間がかかるに違いない、と
私も一旦家に戻ることにして
靴を脱いで家に入ったところ
私は見た!
リビングルーム真ん中で
履いてしまった靴を脱ぎたくないがばかりに
ホフク前進している男を!
身長182センチのガッシリした中年男が
リビングルームの真ん中まで
デカイ図体を横にして
靴を床につけないように足を持ち上げながら、腹で床を這いずり回る姿は
あまりにも異様であり
明らかに異常であり
思わず心から本気で
「何バカなことやってんのっ!」
と怒鳴ってしまった私。
私の剣幕に、はっと我に返ったらしく
夫は
「そうだよねえ、靴を脱いだ方がずっと早いよねえ」
と、おもむろに座りなおして
照れ隠しの笑いを浮かべながら、スニーカーの紐を緩め始めた。
今年53歳になる男です。
そしてその後
「いや、僕はね、わかったんだよ、僕って子供の感性を持ち続けてるんだね」
と
全く意味不明な言い訳をかなり真剣に述べており
私の方は呆れ果てて、怒りを通り越し
それから数日
あのホフク前進する姿を思い出しては笑っていました。
暑さのせいで夫の頭は少しイカれていたのか。
その夫ペーターも
東京滞在の1週間でその他いろいろとヤラカしましたが
今日、無事にパリに向けて発ちました。
静かで平和な、
でもちょっと寂しい東京の日常が戻ってきます。


