「売れないね」と囁かれた(といっても25万枚以上売れた)『BGM』の“LOOM/来たるべきもの”を聴いた時から、次作の内容を予感していたのだと思う。そして、意外と早く訪れた8か月後の「その時」。「Technodelic」の1曲目“ピュア・ジャム”は予感以上にシンプルだった。最高傑作だけど、もっともっと、売れないだろうなと思った(とは言っても10万枚以上売れたが)。世界で初めてサンプリング・マシンを使用したなど、当時の日本の最先端テクノロジーがなければおそらく完成しなかった作品だろう。
 この頃だったと思うが、ティム・ブレイクと坂本龍一のインタビュー記事が「キーボード・マガジン」あたりであったのだが、テクノロジーや操作性。サウンドの再現性などすべてにおいて日本の技術の高さを誇るように語る坂本と、それに押され気味なブレイクの対比に記事の面白さを感じつつも、昔からのゴング・ファンとしては何とも忸怩たる思いを禁じ得ないところもあった。この頃には日本の電子楽器は世界最高峰に登りつつあった。そんな時代の日本の、テクノロジーを凝縮し、単純化した作品といえるのではないかと思っている。