高校2年の時に初めてこのアルバムを聴いた。「ユー・アンド・ミー」は何年か前にラジオで聞いたなぁ、とか思ったが、全体的に「ポップスだけどロックじゃない」と思い、当時プログレ至上主義者でロックを求めていた僕は高い評価ができなかった。前作
「童夢 - Every Good Boy Deserves Favour - 」でのポップ路線をさらに進めた形で、今作では“マイ・ソング”のような重厚な曲もなくなっていた。サウンドも軽快になり、特にジャスティン・ヘイワードのギターは更に圧縮されゆがめられた明るいトーンになり、それに釣られてマイク・ピンダーのサウンドも明るく変貌していた。そして今回改めて調べてみると、驚きの事実が分かった。マイク・ピンダーは長年メロトロンを使用してきたが、本作ではメロトロンの元祖といえる”チェンバリン Chamberlin”の方を使用したという。もしかしたらメロトロンからチェンバリンに変更したことで、音色も明るく変わったのかもしれない。
今改めて聞き直したら、ヨーロピアン・ポップスを聴くような味わいがあり、これはこれで評価できるアルバムとなっていた。このアルバム録音当時、ヘイワードは父を失ったばかりで失望しており、グレアム・エッジも辛い離婚を経験していて、お互い失意の時代だったらしい。それなのにこの明るいトーンの作品を作ってしまえるのだから、やはりプロである。
とはいうものの、ムーディズの最高傑作は「子供たちの子供たちの子供たちへ -To Our Children's Children's Children - 」であることに変わりはないのだけれどね。年を経て聞く耳が変わるというのがまた、音楽の楽しみといえるね。