水谷豊原田美枝子主演。自分の行動を制御できず、どうにもならない自分自身に引きずられ、引っ張られる若いカップル。男ははずみで両親(内田良平市原悦子)を殺し、女は幼馴染みの男を慕い、振り回し・振り回され続ける。葛藤・怒り・悲しみ・諦めと目まぐるしく感情がゆさぶられる。そんな二人の自分自身からの脱出行。
 水谷は当時24歳。原田は18歳。水谷の演技はリアルである。原田は演技は良いが、セリフが棒読みっぽく感じる。もしかしたらアフレコ時にうまく出来なかったのかも知れない。とまれ、全裸を辞さない体当たり演技は評価されてよい。そもそも筆者は原田美枝子を観音様と崇めており、おそらく勝新太郎もその一人で、1980年、勝新は原田美枝子をモデルにして、ユニークなヌード写真集を撮影している。股間から上りくる太陽の写真なんかは今も忘れられない。
 他にも信奉者はあとを絶たず、深作欣二神代辰巳山本薩夫相米慎二黒澤明など、映画監督の巨匠たちにも可愛がられた女優であり、名作・名演も多い。今も映画やテレビで見かけるが観音様のお力が健在であるのは嬉しい限りだ。
 さて、本作の音楽の話。全編英語で歌う楽曲が流れている。発音が怪しい英語で、どこか聴いたことがあるような声の気もする。そこで調べてみたら、やはりゴダイゴが担当していた。監督長谷川和彦は、当初はビートルズの曲を使用したいと考えていたが、使用料が莫大になることを知って諦め、ゴダイゴ担当にした。インストルメンタル曲をと思ったが、ゴダイゴが英語のヴォーカルのままで行いたいとのことで、それもいいかと思い直した。というようなことを語っている。
 先月、元メンバーでギタリストの浅野孝已が亡くなった。冥福を祈りたい。