『美女と液体人間』の“美女”とは白川由美のことで、’56年のデビューから白川は映画に芝居にと引っ張りだこでまさに全盛期。’64年二谷英明との結婚まで夥しい数の映画に出演した。これはその1本。白川はキャバレーで歌うヴォーカリストの役柄で、歌う姿も披露しているが、吹き替えだが、妙に発音がいいので、外国人によるものだろう。目鼻立ちがはっきりしていて日本人離れしたところのある白川だから余り嫌味に感じさせないのはさすがだ。
さて、相手役(男)は佐原健二。ゴジラシリーズやウルトラセブンなど怪獣物の顔である。ここでは放射能の研究をする大学教授役だ。いい男だが、少しコミカルな感じを醸し出すのが彼の特徴でもある。
捜査を仕切る捜査一課長役は平田昭彦。彼もウルトラマンやゴジラシリーズの出演で知られる二枚目俳優で、佐原とは親友だったそうだ。’84年に亡くなるまで夥しい数の映画に出演して来た。TVではぴったしカンカンのレギュラー回答者として記憶する人もいるのではないでせうか。
脇役もスゴイ。小沢栄太郎、千田是也、佐藤允、伊藤久哉、北川町子、土屋嘉男、など日本映画最盛期を創り上げた俳優陣である。
さて内容はビキニ水爆実験で被ばくした漁船員が多量の放射線により液体人間化して東京に舞い戻り、人々を次々と液体化して殺すというもの。
興味深いのは当時のキャバレーやアパートの情景。アパートの中には古めかしいとはいえ(当たり前だが)、テレビもあり、この時代はこういう感じだったのかと、郷愁を感じる。というのも、公開された1958(昭和33)年は私の生まれた年なので、感慨もひとしお。戦後13年、日本もここまで復興してたのかという気持ちもある訳で。
さてさて、この液体人間に警察の打つ手はなく、液体にがんがん銃を撃ちこむだけの無能ぶり。というか、液体に銃ぶっ放しても効き目がないのは一目瞭然。この無駄弾の使い過ぎは始末書もんでしょうな。それでも、人間が液体化してゆく姿の撮影はさすがの円谷英二とそのスタッフ。キャバレーの中で溶けてゆく刑事の姿はちと怖かった。
で、液体人間を殲滅させるのは放電とガソリンによる焼き討ち、ということで科学者や警察幹部がケテーイ。放電するのは当時の技術で再現は無理だったのかその映像化はなし。そのかわりというか、火炎放射機とガソリン放流により下水道と川を焼き尽くすという乱暴な計画は実行される。これでは東京が灰燼に帰してしまい、その方が、液体人間より危険ではないかと危惧するものだが、そんな雰囲気はさらさらなして事は進んでゆき、炎に包まれる東京でエンディング。これってハッピー・エンドなのかなぁ。まあ、いいけど。監督はゴジラシリーズで知られる本多猪四郎。