今日も今日とて、山本迪夫監督の“血を吸う”シリーズ3作目にして最終作「血を吸う薔薇」を見た。
 前作で監督に見込まれたのだろう。ふたたび岸田森が吸血鬼役に扮し、怪演を披露する。主演は黒沢年男。肌は浅黒く骨格がいい黒沢は岸田と好対照である。どうみても心理学教授には見えないが、まあ、そういう設定になっているので仕方がない。今回の相手の女子大生役は眉間のほくろがチャームポイントの美人望月真理子。当時24歳。他の女子大生が次々に岸田の毒牙にかかる中、望月は最初から黒沢と怪しい雰囲気になっており、女吸血鬼に襲われても唯一正気のままでいられるという超能力(?)を持つヒロインである。
 本作ではグロさのみならずエロ度もアップ。数人の女優がバストトップを披露している。
 異色なのは田中邦衛の参戦。ホラー向きとはいえず、動きひとつひとつがコミカルに見えて仕方がない。監督もそう思ったのか、謎解きの重要な役どころではあるものの早い時期に殺されてしまい、その後は登場しない。
 内容は岸田の迫力の演技で終盤まで見飽きさせない。ただ、最後の最後の十数分。岸田と黒沢の格闘が続く。素手同士ではどう見ても黒沢の優位は否めないが、演出では両者互角で進む。ここで、前作をも含めて思う事だが、岸田の吸血鬼に何か強い妖術がひとつあればよかったのにと思う。女性を眼力ひとつで自由に操れるのだから、男もどうにかできないかと思えるものだが、そうはいかないのが敵役のツライ所ということか。結局岸田はグアーッという怪しげな叫びを何度もあげて、黒沢とくんずほぐれつ大乱闘をしたものの、黒沢が咄嗟に掴んだ火掻き棒に刺され、息絶える。という死に方も前作とほぼ同じ。
 ここも、何か吸血鬼の弱点を突いて終わらせるといったやり方は無理だったのだろうかと思う。例えば日に当てるだとか、聖水・十字架・聖書の類を使うとか。吸血鬼の起源は200年前の流浪の外国人で、キリスト教を捨てた人の設定となっているのだから、キリスト教グッズはその疚しさに刺さり込む気がするのだが。
 とまれ、結果はフィジカルな決闘で幕が下ろされる。結局この“決定打”のない終わり方が、岸田森迫真の演技も空しく、この後シリーズ終了の要因となってしまったのではないかと思う。