PL-1150が来た時、自分は何をしようとしたか。今ではとても恥ずかしい間違いを犯していたのだけれど、当時高校1年の馬鹿ぼんを勘弁して頂きたい。当時応接間に鎮座していた トリオのセパレート・ステレオにはTAPE OUTとTAPE PLAY(AUX)のピン端子が付いてゐた。つまりは、外部の再生機器を繋げてこのオーディオを鳴らすことが出来る。だから、このTAPE PLAY端子にアナログ・プレイヤーを繋げば音が出ると思って居たのだ。
だが、この目論見はすぐに瓦解する。音は鳴らない。いや、正確にいうと、音はフル・ボリュームにすると、チャンチャラチャンチャラと小さい音は聞こえるが、こんなのでは鑑賞することにはならない。そこで自分はオーディオについて勉強し直すことにした。そして、自分は二重の間違いをしていたことに気付いた。一つは、プレイヤーから出力された電気信号は非常に微細なため、増幅してアンプを通さなければならないこと(PHONO端子を持っているアンプを使うこと。)。そしてもう一つは、アナログ・レコードはその音質を保つためRIAA偏差(カーブ)という、超簡単に言うと高音を強調し、低音を減衰させた音響特性(イコライジングして)でカッティングし、再生時にアンプはその逆の特性で音質を矯正して音を出すということをしている。だからこの時音が出る筈もなく、もし出たとしても、高音が強調されたチャカチャカ・サウンドで再生されてしまっていた筈なのだ。これは正直予想外の展開だったが、セパレート・ステレオのプレイヤーの下を覗いて見たら、中は比較的シンプルに出来て居て、プレイヤーからアンプ部に繋げているコード(ケーブル)とプラグ部分が見えたので、この線を切ってピンと線を直接繋げれば音は出ると思った。思ってしまえば、これはもう進むしかない。自分は迷わず線を切り、ピンと線をビニールテープで繋げてみた。すると、やはり音は出た。「しめた、これで計画は進めることができる。」と思った。
翌日だったか、親爺をセパレート・ステレオの前に呼び、こうやってプレイヤーを繋げただけで音はこうも違う。ということを力説した。音質は確かに少し、特に高音の伸びは向上していた。ケーブルを断線したことは言わず、このプレイヤーの性能を発揮させるのはこの環境ではダメだ。もっと性能の良いアンプやスピーカーを使わないともったいない状況だ。とまくしたてた。親爺はそれから数回自分のプレゼンを聞いてくれた。「買う」とは言わなかったが、興味があるのは見え見えだった。そこで自分は次の攻勢に出た。大量のカタログを持ってきて親爺に見せ、今の時代のオーディオの性能の良さを知らせつつ、自分の欲しい機材を理解させようという魂胆だった。
{写真は2台目のパイオニア PL-1250。2台目というか、正確には友人が引越す時に不要になるという事で、引き取ったものだ。おそらく1980年代後半位の時だったと思う。だから、そんなに使って居ない。PL-1150と同世代の上級機で、基本性能はさほど違わないが、ターンテーブルがやや高級感があるのと、トーンアームの高さを調節することが出来た。PL-1150とPL-1250は今も現役で動いている。PL-1150のプラスチックのカバーは割れてしまって今はないが、それ以外は一度も故障したことがないから、両方とも45年目に突入して居る。オーディオの中で一番長持ちするのはプレイヤーだと思って居る。まさに一生ものである。}