諸星大二郎さんの新作短編集 諸星大二郎劇場 第2集 『オリオンラジオの夜』が1月31日に発売された。
 冬の晴れた夜、とある場所、特定のラジオでのみ受信できるという幻の放送「オリオンラジオ」から流れて来るポピュラー音楽をモチーフにして作者のノスタルジックな思い出とともに描かれた作品集。

 

  第1話 サウンド・オブ・サイレンス

 諸星さんは当初、英語の歌詞を掲載したいと思っていたが、許可が取れなかったとあとがきに書いています。

第2話 ホテル・カリフォルニア
 
 最初諸星さんがイメージしていた曲は本当はママス$パパスの「夢のカリフォルニア」だったそうですが、当人が勘違いしていたそうで、それでも結局「ホテル・カリフォルニア」のままで書き上げられたそうです。(そういえば、この曲だけ時代が大分後なんですよね。「夢のカリフォルニア」でしたらぴったりでした。

第3話 悲しき天使
 ビートルズ
 ビートルズをお好きな人なら誰もが知っている、アップル・レコード最初のシングル盤です。
 一説に、ポールがメリーに一目惚れしたとも言われていますが、二人の関係は、さて、どうだったのでしょうか。

第4話 西暦2525年

 一発屋ゼーガーとエバンスによる唯一のヒット曲。歌詞掲載について、管理者は何の問題もないとすんなり了承してくれて、「サイモンとガーファンクルとはえらい違い」と皮肉交じりに書いています。

第5話 赤い橋

 浅川マキさんのじわっとくる曲。当然のごとく諸星さんの作品もじわっとくる幽幻なものとなっています。場所を中国にしたら、名作「 諸怪志異 」シリーズ内の一篇として挿入してもおかしくないものだと思います。

第6話 朝日のあたる家

  「オリオンラジオ」最終作。これは諸星さん自信が"難産"を認めたミステリィ・タッチの作品。ひねりの利いた結末は本人が思うほど悪くないと思います。

原子怪獣とぼく

  「昭和のヒット曲仮託してシリーズを続けることに限界を感じた」諸星さんは、音楽にこだわらずに書いていこうと思い直して、映画をモチーフにした作品。誰も知らないようなB級ホラー作品というのもユニークですね。

ドロシーの靴

 映画公開の時代を考えたら、やはり諸星さんと私の年齢差を感じずには居られません。登場する映画は「ドラキュラとせむし女」と「オズの魔法使い」。諸星さん独自のユーモアがそこここに散りばめられた不思議な作品になっています。