1979年ホルガー・シューカイのアルバム『movies』。
もちろんアナログでは所持しているが、CDでは未だ入手しておらず、今買おうと思ったら2000円以上はするので我慢している。アナログ盤は事務所でしか聴けないので、ようつべで見つけて今家の居間で聴いてゐる訳である。
A面2曲目"Oh Lord, Give Us More Money"を聴き直していると、この曲はCANの名作:'73年の『Future Days』
の延長線上の曲構成であるとわかる。まさにカン全盛期の要素が詰まったサウンドである。ここで思い至るのはカンが最も高い評価をされているUA(レーベル)時代の音楽的リーダーはイルミン・シュミットではなく、ホルガーだったのではなかろうか、といふこと。
ソロ・アルバムを聴くと、そのバンドのサウンドの核が実は誰だったのか。といふことについて、例えばイエスにおいては、ずっと音楽的リーダーと目されていたジョン・アンダーソンではなく、クリス・スクワイアであったことが彼のファースト・アルバム『Fish Out Of Water』
で明確になってしまった時のように。
おそらくヴァージン・レーベルに移籍した時('75年)に、サウンドの変革を求められたりしたこともあったのだろうが、(それが原因かどうかはわからないが)真に"プログレッシヴな"バンドであったが故のカンの音楽的な迷走が続き、結局以前のような高い評価を得られなくなったことと、「もうこういうサウンドは求められていないということに彼は気づいてゐない」といふ主旨のことを他メンバーから言われており、事実上干されてしまっていたホルガーのバンド上の立場とが無関係とは考えられない。
当然バンドは生き物であり、環境が変わればその様相も変わる。カンは常に新しく変容しようとしてきたバンドであり、ホルガーはそれには付いて行けず、ある時期で変容を止めた人物であったということもできよう。しかし、それによって、バンドの最も良かった時期のファクターを多く持ち続け得た唯一のメンバーがホルガーであったということもできるだろうし、事実そのことで、カンのメンバーの中で一番認知されている人だということもできるのだと思う。
[今日、ホルガーが2017年9月5日に亡くなって居たことを知った。今が今まで存命だと思って居たので、正直ショックだ。もう彼の新作は聴けないのだといふ寂しさと共に彼の作品を振り返ってゐる。 ]